【心・技・体】スポーツを頑張る子供のために親ができること

2016年2月10日ペアレーチング

子供のメンタルケアについて

サッカーをする少年

最近ではアマチュアの世界でもメンタルトレーニングが重要視されるようになってから、スポーツ少年団や部活動の指導者、スポーツをする子供の親御さん達にも心のトレーニングに興味を持つ方が大変多くなりました。

ネットや書籍などを通して様々な知識を身につけれるようになった時代だからこそ、その知識をどう活用していくべきかも十分に考える必要がでてきました。

それはメンタルトレーニングも例外ではありません。

正しい理論が必ずその選手の結果や成長につながるとは限りませんし、子供は大人のミニチュアではありませんので、ひとつの理論に固執せず子供の成長に合わせてサポートしていくことが大切です。

メンタルトレーニングの効果が出ない理由

私のところに相談へ来られるお母さんは、子供がするスポーツにとても熱心な方が多く、今まで「目標設定」「ルーティン」「イメージトレーニング」「練習記録を書かせる」などメンタルを強くするために色々な情報を集めて試してみたけれど中々結果につながらないと言う相談者さんは少なくありません。

しかも上手くいかない原因を子供に求めてさらに厳しくしてしまうという親御さんも少なくありません。

しかし例外なく原因は子供ではなく、やり方に問題があるケースがほとんどです。

メンタル指導は知識さえ習得すれば誰でもできそうな気がしますが、指導者や保護者の方が行って上手くいかない原因は、心のトレーニングをしていると頭では理解していても、実は無意識に優先させて子供に求めているのが「勝利」「活躍」「成功」など違うものになるため、その欲や希望が邪魔をして本当の意味での心のトレーニングができていないという状態をつくってしまいます。

ジュニア世代に行うメンタルトレーニングで大切なことは、子供の気持ちを置き去りにしないということです。

何事に対しても知識を得ることは大切なことですが、メンタルトレーニングの観念ばかりに気を取られず、目の前の子供自身としっかり向き合ってあげることが大切です。

身代わりアスリートの問題点

身代わりアスリート

皆さんは「身代わりアスリート」という言葉を聞いたことありますか?

親やコーチが果たせなかった夢を押し付けられ、過度な期待でプレッシャーをかけられてしまっている子供のことを言います。

もちろん、親子で同じ夢に向かっていくことはとても素晴らしいことだと思います。

しかし目の前の勝利に目がくらんだり、自分の期待に応えてほしくて、大声で怒鳴ったりきつい言葉をかけてお子さんの行動や気持ちをコントロールしようとしたことはありませんか?

子供の意思を無視して、親の期待や願望や夢をそのまま押し付けてしまえば、子供はその言動から色々なことを感じとってしまいます。

「きつい言葉で指導する大人達に動かされている自分の価値はどこにあるのか…。」

子供が成長するためには、子供自身が「自分の価値」を認められることが大切な反面、その大切なものを親や周りの大人達が摘んでしまっているケースがあります。

  • 「何が何でも~をしなければならない」
  • 「何が何でも~でなければならない」

そのような言葉は子供に「不安」と「恐怖」を与え、大事な場面で実力が発揮できなってしまう恐れがあります。

たとえばオリンピック前に大勢から「金メダル候補だ」と言われていた選手が、本番では全く実力が発揮できず敗退というケースがあります。

このようなケースでは、本人が「大勢の期待に応えるためには、何が何でも金メダルを取らなければならない」という大きなプレッシャーを自分自身で感じてしまい、実力を発揮できずに終わってしまったということがあります。

逆に、オリンピック前にはそれほど注目されていなかった選手が、素晴らしい結果を残したといケースも少なくありません。

この場合だと注目度が低かった分、「何が何でも結果を残さなければならない」という過度なプレッシャーを感じることなく、実力が十分に発揮できた結果なのかもしれません。

それは子供達も同じで、まずは「安定」「安心」「自己肯定」がなければなりませんし、その逆に「不安」「恐れ」は子供達の行動を消極的なものにしてしまいます。

他の選手と比べない

バスケットボール

特にサッカーやバスケットボールなどのように敵と味方が入り乱れてボールを奪い合う競技では、上手な選手とそうでない選手の差が目立って映ります。

そんな時に自分の子供に対する期待度が強い親御さんは「〇〇君はあんなに目立ってるのに!うちの子は何なの?コートでオロオロしちゃって!」「いつになったらレギュラーになれるの!?試合に出られないんなら辞めちゃえばいいのに!」とイライラしてしまうことがあります。

その結果きつい言葉で子供を責めてしまうのですが、そこで親が子供へ叱咤を飛ばすメリットは何ひとつありません。

むしろ逆に、そのような感情が邪魔をして「子供が成長してる大切な時期」を見逃してしまう恐れがあります。

どんな選手にでも必ず伸びる時期が訪れます。それは子供自身がスポーツをするうえで一番面白い時期でもあります。

しかし他の選手と比べて子供へ否定的なことを言えばスポーツをする楽しさを摘み取ってしまいます。

大切なことは「自分のライバルは昨日の自分」です。昨日の自分より少しでも成長すればその積み重ねが大きな成功へとつなげてくれます。

親はその成長をしかっり見守ってあげることが大切ではないでしょうか。

欠点や短所ばかりを指摘しない

野球をするスポーツ少年

スポーツをするうえでポジティブ思考はとても大切で、自信を持って挑戦・前進するためにとても大きな影響を与えます。

そのためにはまず親がネガティブな発言をしないことです。

日本の教育は「欠点修正」を基本としており、その中で育ってきた私たちはどうしても欠点に目がいく傾向にあります。

もちろん改善するべき点に着目し、反省していくことは大切ですが、人は欠点ばかりを言われると自分の中にマイナスなイメージばかりが刷り込まれてしまいます。

すると肝心な時に「不安」「恐怖感」が邪魔をしてポジティブでいることが難しくなってしまいます。

まずはお父さんやお母さんがポジティブな声かけをするように心がけることが大切です。

結果より過程を評価することが大切

サッカーをする少年自分の子供のミスが目立って負けた試合。お子さんの帰宅後にお父さんやお母さんはどんな言葉をかけていますか?

試合会場からの帰り道にお母さんが掛ける言葉でこのようなものを耳にします。

  • 「ダメじゃない!普段から真面目に取り組んでいない証拠よ」
  • 「どうして、あんな初歩的なミスしたの!?」
  • 「何回シュート外した!?体育館で何やっているの?」
  • 「今日何点入れた?活躍できてないよね?」
  • 「あのミスはないでしょ!そりゃコーチから怒られて当然よ!」
  • 「あのミスがなかったら勝てていたのに!しっかりしてよ!」

その言葉に対して「うるさいな!俺だって真剣にやってるんだよ!」と言える子供は立派ですよ。お母さんの育て方は間違っていないなって思います。

もちろん子供達には「お父さんやお母さん、バスケができる環境には常に感謝の気持ちを持とうね」と言っていますが、それとこれは別です。

コートで実際にプレーしているのは、お父さんでもお母さんでもなく自分だという自覚を持っているのだろうし、子供自身も今日の何が悪かったのか分かっているのでしょうから、反抗的な態度に腹を立てずグッと堪えてあげましょう。

試合で勝ったり負けたり、プレーが上手くいったり失敗してしまったり、時には挫折を味わう事もあるでしょう。

それでも子供達は、その繰り返しの中で日々成長していきます。

しかし、大人が結果ばかりを評価すれば、プレッシャーを与えてしまい、子供達は失敗を恐れて学ぶべきことが学べなくなってしまいます。子供達が認めてほしいのは、 自分がしてきた「努力」なのです。

試合に負けてもポジティブな評価をされれば、子供達は褒められたことに嬉しくなり、もっと努力をしようとするでしょう。

心が安定した選手に育てるには、親が「この試合に勝てないからダメ!」「この試合に勝てたからよし!」ではなく、「あの努力があったから、結果が出せた。頑張ったね!」と過程を評価してあげることが大切なのです。

子供の不調に対する対応

野球の練習

プロのスポーツ選手だろうと、スポーツ少年団や部活動などでスポーツをする子供だろうと、誰にでも「良い時期」と「悪い時期」が訪れますし、常に絶好調が続くことはありえません。

そしてここで気をつけたいことが、精神的・肉体的に疲労が溜まってストレスを抱えてしまっている状態であれば子供にも「休養」「休息」が必要だということです。

日本のスポーツ指導は「忍耐が美徳」「我慢が正義」みたいな考え方がありますが、それで体と心が引き裂かれてしまっては、スポーツを続けていく意義を見失ってしまいます。

子供がスポーツをしていく中で抱える問題は主に「スランプ」「燃え尽き症候群」「イップス」などがあげられ、そのような状態になれば親の支えが一番重要になります。

子供が何らかの不調を訴えてきた時は、「努力が足りないのよ」「集中していない証拠よ」などと決めつけず、お子さんの話をよく聞いてあげてほしいなと思います。

子供の価値観を大切に

リオ五輪体操男子日本代表の内村航平選手は母の周子さんからの愛情をたくさん受けて育ってきました。

周子さんは内村選手が出場する大会ではいつもご自分で作った旗を振りながら大声で応援をしてくれて、内村選手の一番のファンであり、勝っても涙、負けても涙を流していたと言います。

それに対して息子である内村選手は、一人でしっかりと目標に向かって進んで行ける自立心がしっかとした選手。

そんな彼が母親の行動を嫌がるのは当然のことかもしれません。

そしてある日、周子さんに「もう応援に来ないでくれ」と言ったそうです。

今まで息子の応援を生きがいにしていた周子さんは「お母さんの愛情が分からないの?」と涙を流したそうですが、内村選手は「俺は頼んでいない」と返したそうです。

しかし、周子さんがその後にした行動がとても素晴らしかったのです。

周子さんは今までの自分を客観的に振り返り、息子に関わりすぎたことを反省し、それからは距離をとって影から見守ることに徹底しました。

この「客観視」は簡単なようで中々できることではありません。

特に親子間では遠慮なしに相手の心の中に土足で入ってしまうことも。

まずは親が子供の価値観や守りたいと思っているものをしっかり理解してあげることが大切です。

まとめ

今回は 「【心・技・体】スポーツを頑張る子供のために親ができること」についてお伝えしましたがいかがでしたでしょうか。

何気ない一言、子供のためだと思ってかけた一言でも、その裏には親の欲や見栄、願望の押しつけが隠れていたり…。そのようなことは誰にでも起こりうることなのです。

お子さんのことを思っているからこそ、間違った方向ではあっても、そのようになってしまうのだと思います。

何度も言いますが、親子で一つの夢を共有できるのはとても素晴らしいことです。ただし夢の「共有」は親の行き過ぎた言動で「押しつけ」へと変化し、子供に大きなプレッシャーを与え、成長を妨げる危険があるのです。

親がルールを守り、子供の自主性を育てながら、一つの夢を共有できたら更に素晴らしいことではないでしょうか。

2016年2月10日ペアレーチング

Posted by 葉月 愛