【内発的動機づけ】スポーツをする子供のやる気を引き出す6つの法則

2016年2月13日ペアレーチング

スポーツをする子供 こんにちは、メンタルトレーナーの葉月(@w_haduki)です。

今回のテーマは 「スポーツをする子供のやる気(意欲)」についてです。

今は社会に出てからも「自主性」や「主体性」が重要とされるようになり、指導者や保護者の方も子供達に「自主的に行動することが大切だ」「主体性を持って行動ができるようになりなさい」と言っている場面をよく見るようになりましたが、実際のところは言われただけで簡単に育つスキルではないし、この2つを育てるためにはまず「意欲」や「やる気」がなければ子供達は前に進むことができません。

そしてこの「やる気」を出すためにはそのための環境が整っていなければ、一時的に引き出すことはできても継続させることは難しいでしょう。

そしてさらに継続させるために大切なことは「好きでいること」「重要性を感じていること」ということです。

よく「親が勉強しなさいと口うるさく言うのは逆効果」なんて言われていますが、まさにその通りで、子供のやる気を低迷させてしまう原因のひとつに、周りにいる大人の言動があげられます。

そこで今回は「子供が自発的なやる気を引き出すための方法」について考えていきたいと思いますので、最後までお付き合いいただければと思います。

やる気とモチベーションの違い

サッカーの試合

「やる気」と「モチベーション」の意味を同じと捉えている方も多くいるようですが、やる気とモチベーションの意味は全く違いますので、まずその点から説明していきたいと思います。

やる気とは「何かの物事を行う気持ち」を意味し、モチベーションとは「何かの物事を行う動機づけ」を意味します。

つまり「次の試合で勝ちたいから、練習を頑張ろう!」でいうと、「次の試合で勝ちたいから」がモチベーションで「練習を頑張ろう!」がやる気になります。

冒頭でやる気を継続させるためには「好きでいること」「重要性を感じていること」が大切だとお話しましたが、それがモチベーションに当てはまります。

この軸がしっかりしていなければ、十分なやる気を引き出すことも、そのやる気を継続させることもできませんので、まずはこの点をしっかり頭に入れておいてください。

子供に口うるさく言ってしまうお母さんのお話

先日、私がメンタルトレーナとして携わっているミニバスケットボールに所属する少年のお母さんからこのような相談を受けました。

息子にはもっとストイックにバスケットと向き合ってほしくて、つい口うるさく言ってしまいます。

そのことが原因なのでしょう。「もう試合を見に来ないで!練習も送り迎えだけでいいから見学しないで。お母さんがいると集中できない。」と言われてしまいました。私はただ、どうせ頑張っているのなら、もっとやる気を出してほしいだけなんですよね。

それに対して「試合に来るな」なんて、ひどいと思いませんか!?反抗期ですかね?葉月さん、息子はどうしたら私の気持ちが分かってくれるんでしょうか。

そして私は以前、逆の立場である選手(息子)からこのような愚痴を聞いたことがあります。

それは「うちのお母さん色々うるさいんですよね…。俺の試合を見てイライラするなら来なきゃいいのに!試合の時はお母さんがいない方が集中できます。」といった内容でした。

試合が終わって帰宅した後に自分のしてしまた失敗を責められることも、「今度同じミスをしたらゲームの時間はなしよ!それより自主練をしないさい。」と言われることにもうんざりしてるし、「あの時はこうするべきだったんじゃない?」ってアドバイスされることも嫌で「そんなこと言われなくても分かってる!」ってイライラしちゃうんだとか…。

確かに頭では分かっているのに体がついてこないことって多々あるし、スポーツなんて相手あってのことなんで想定外の出来事も多くて思い通りにいかないことなんてたくさんあります。

私たち大人もそうですよね。自分でしっかり自覚していることを指摘されると「そんなこと分かってるし」「これからしようと思ってたところだし」とイラっとして「なんかやる気無くすわ〜」ってこと仕事でも家庭の中でもありませんか?

そう考えれば「親が勉強しなさいと口うるさく言うのは逆効果」と言うのは、確かに理にかなっていると思いませんか?

やる気を高める=動機づけ

スポーツをする少年 心理学でやる気を高めることを 「動機づけ」(モチベーション)と呼び、モチベーションを上げることはスポーツをするうえでも、勉強をするうえでも、子供達が出す結果に大きな影響を与えます。

お母さん達もそのことを分かっているので、なんとか子供にやる気を起こさせようと、様々な言葉かけをするのですが、今回のケースのようにマイナスに作用してしまうことがあります。

動機づけには「外発的動機づけ」「内発的動機づけ」の2つの方法があります。

多くの親御さんが子供のやる気を引き出すのに使用しているのが、褒美や罰でやる気を起こさせる「外発的動機づけ」で、今回のお母さんが行っていた方法も外発的動機づけに当てはまります。

もうお気づきかもしれませんが、この外発的動機づけにはいくつかの注意点があります。それは使い方を間違えれば、やる気の低下へつながる危険があるということです。

外発的動機づけの注意点

外発的動機づけとは「強制」や「報酬」などを利用して行動させる最も自発性が低い動機づけです。

報酬を与える代わりに嫌々ながらも行動してもらう、いわゆる「アメとムチ」を使ったモチベーションコントロールに使われますが、外発的動機づけには、重大な注意点があります。

それは子供に多用していると、言われなければ、あるいはご褒美や罰がなければ行動しなくなるということです。

スポーツで指導者が試合中に、怒鳴ってハードプレーを要求したり、「失敗をしたらコートから出て行け!」と罰を与えることで必死にさせるのも、外発的動機づけの一種です。

勝つことだけを考えればこの方法が効率的で簡単なため、指導する側はこの方法に頼りがちになります。

しかし、この方法ばかりで指導をしていると「好きでやっている」「罰を受けたくないからやっている」に変わってしまい、その子の選手としての将来にも大きな影響を与えますし、思考が短絡的になる危険性がありますので、外発的動機づけには十分に注意が必要なのです。

叱咤が裏目にでる現代の子

バスケットボールの試合

これは私がメンタルトレーナーとして携わっている、中学男子バスケットボール部のお話しです。

ポイントガードの主力選手が試合中に左足を怪我し、練習に参加できない日が続きました。

彼がようやく練習へ復帰できたのは怪我から3週間後のことでした。

彼は「やっと練習に復帰できる〜!」と喜んでいたものの、どうしても左足を庇うような動きになりがちで、思いきったプレーができない日が続きました。そんな苛立ちが彼から伝わってくることも多々あり、それは試合の中でチーム全体に連鎖するほどだったといいます。

そしてある日、そんな状態を見かねた顧問が「そんなお前はチームに必要ない!そんな態度で練習するのなら帰れ!辞めてしまえ!」と彼を怒鳴りつけたそうです。

顧問は「これで気合いを入れ直してくれたら…」との思惑があったようですが、その思いは全く伝わらず、その選手はさらにやる気をなくし、練習をさぼるようになってしまいました。

後日顧問から相談された私は、その選手のカウンセリングを行いました。

すると「先生にお前はチームに必要ないと言われたんでもう辞めようかなって考えています。先生には俺が抱えている問題なんてどうでもいいんだろうし、結局は使えない選手は必要ないってことですよね。俺だって好きで怪我をした訳でもないし、こんな状態になった訳じゃなんです。」と今の気持ちを話してくれました。

それから彼に何度かカンセリングを行って、なんとか部活に戻り、今ではしっかり自分を取り戻すことができましたが、「帰れ!辞めてしまえ!」と言われて、「なにくそ!」と奮起するのはひと昔前の話で、今回の選手のようにメンタルを消耗してしまうケースも少なくありません。

その原因となる一つに自己肯定感の低さがあげられるのですが、それはまた違う記事で説明したいと思います。

子供がやる気を高める動機づけ

サッカーの練習 これまで外発動機づけのメリットとデメリットについてお話ししましたが、次はもうひとつの動機づけについてお話ししたいと思います。

子供が自ら進んでやる気を起こすには「内発的動機づけを発動させること」が大切です。

内発的動機づけとは、外発的動機づけと違って、 自分自身の心の満足感を得ることを目的とし、外的報酬にもとづかない動機づけのことをいいます。

つまり罰や褒美のために動くのではなく、「試合で勝ちたい」「レギュラーになりたい」「コーチに認めてもらいたい」など自分自身がそうしたいからそうするという行動のことを意味します。

悪口をやめさせた老人の話

外発的動機づけと内発的動機づけに関する面白い話を聞きましたので、ここでお話したいと思います。

 

ある日、「バカ」「汚い」などと、学校帰りの子ども達に悪態をつかれた老人が、ある計略を思いつきました。

次の月曜にその老人は、庭に出てきて子ども達に「明日もまた悪態をついた子には、1ドルずつあげるよ。」と言いました。

子ども達はビックリし、また喜んで、火曜にはいつもより早く来て悪態のかぎりを尽くしました。

老人は悠々と出てきて、約束どおり子ども達にお金を与えて「明日も同じように来てくれれば、25セントずつあげるよ。」と言いました。子ども達は「25セントでも大したものだ」と思って、水曜にまたやって来ました。

声が聞こえると、すぐに老人は、25セントを持ってきて、子ども達に支払いました。そして「これからは1セントずつしかあげられないよ。」と老人は子ども達に言いました。

子ども達は、信じられない!といった様子で「1セントだって?」と、バカにしたように口々に言いました。 そして子ども達は、「もういいよ!」と言って、二度と来なくなりました。

 

元々、子供達は老人に対して悪態をつくことを楽しんでいました。

「褒美をもらわなくても、楽しいから悪態をつく」つまり、子供達の内発的動機がそのような行動をとらせていたのです。

しかし、老人が子供達に褒美を与えたことにより「楽しんでやっている」から「褒美のためにやっている」という認知に変わったのです。

そして外発的報酬を得られなくなった子供達は、老人のところに二度と来なくなったということです。

つまりこの老人は、外発的報酬が内発的動機を阻害するという仕組みをうまく利用したということになりますね。

2016年2月13日ペアレーチング

Posted by 葉月 愛