子供が部活を辞めたいと言ってきたら|親と指導者はどう対応するべきか

こんにちは、メンタルトレーナーの葉月です。

スポーツをしている子供達は、勝つことの喜びや達成することの喜びを体験できる反面、チーム内での問題や、指導者との問題、競技能力の問題などで悩みを抱え、今しているスポーツを辞めたいと考えてしまうことがあります。

私がメンタルトレーナーとして携わっているスポーツ少年団や中学の部活動でも、「子供が辞めたいと言っているけれど、どうしたらまたやる気を出してくれるでしょうか」「どうしたらもっとメンタルを強くすることができるでしょうか」と言う保護者の方の相談や、「生徒が練習へ来なくなってしまった」「生徒が部活を辞めたいと言っている」と言う指導者の相談や、「練習が辛い」「コーチが怖い」と言う選手の相談を受けることがあります。

「継続は力なり」と言うように、一つのことをやり遂げたり、続けたりすることはとても大切だと思います。しかし、それと今回のような相談に対して「続けることの大切さを押し付ける」ことは違うのではないかと考えます。

親や指導者が続けることばかりにこだわってしまえば、子供の本当の気持ちや感情を理解することはできませんし、そこで持論を振りかざしても子供の心を動かすことはできません。

それは部活だけに限らず、受験勉強や試験勉強、その他の習い事に関しても同じことが言えるかと思います。

そこで今回は「子供が部活を辞めたいと言ってきたら|親と指導者はどう対応するべきか」について考えていきたいと思いますので、最後までお付き合いいただければと思います。

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部活を辞めたい子供vs続けさせたい親と顧問

中学生の部活動

子供達がスポーツを辞めたいと考える時、どのようなことが原因なのかによって、親や指導者が考えなければならない事が違ってくるかと思います。

私がスポーツ少年団や中学バスケットボール部に携わるようになってからも、「部活を辞めたい」「チームを辞めたい」と言う子供達を何人か見てきましたが、以下のような訴えが目立ちました。

  • 好きでしていたはずの部活が辛いものでしかなくなった
  • スポーツをする意義が見えなくなった
  • 誰のために何のためにきつい思いをしているのか分からなくなった
  • コーチや顧問の指導についていけない
  • レギュラーから外されてモチベーションが保てない
  • そもそも自分には才能がないのではなかろうか・・・
  • チームメイトと上手くコミュニケーションがとれない
  • チーム内でイジメが起きている

1番多くのきっかけは「人間関係」に関する悩みです。

では、子供達が部活を辞めたいと言った時、お父さんやお母さんはどのような言葉かけをしてあげたいと思いますか?

  • せっかく今まで頑張ってきたのに!もう少し頑張ってみたら?
  • 今部活を辞めたらきっと後悔するわよ
  • 自分からしたいって言ったんでしょ?
  • 途中で投げ出すなんて許さないわよ
  • そんな根性がないこと言ってたら社会に出てからもね・・・

など、否定的な言葉を掛けてしまう親御さんは多いのではないでしょうか。そして、それは指導者であるコーチや顧問もそうです。

  • 辛いからって投げ出すのか?お前は社会に出てからもそうするのか?
  • 勝つために辛いのは当然だ
  • 楽しいだけで勝てるほど甘くないぞ
  • 気持ちをもっと強く持て

実際に指導者が選手へこのような言葉をかけている場面を多く見ます。

さて、これらの言葉掛けは正しいのでしょうか・・・。

大人が理解するべきスポーツ指導

中学の部活動

もちろん、スポーツは楽しいだけじゃ勝負に勝てないし、楽しいだけじゃ強くなれません。

しかし、今している部活が辛く苦しくなった時点で、子供達はスポーツをする意義を見失っているのです。

これは高校でバスケットボールをしていた選手のお話です。

彼は小学生からバスケットボールを始めて、中学の部活動ではエースを務め、最後の夏の大会では優秀な成績を残しましたし、ご両親も彼がプロになってくれる事を望み、熱心に応援していました。

しかし、彼のバスケットボール人生に大きな狂いが生じたのは高校へ進学してからです。

顧問による体罰が続き、彼は心も体もボロボロになってしまったのです。

彼が指導者から直接手をあげられることはありませんでしたが、顧問は練習の一環としてミットにぶつかるというメニューを彼だけに与えました。

ミットを持った顧問が彼に向かってぶつかり、彼もそれに向かっていくというメニューです。

そのメニューのせいで彼の肩から手首にかけてはアザだらけだったと言います。それは紛れもなく体罰と言っていいでしょう。

彼は結局、高校2年生になった春に退部届を出すに至りました。

顧問からは「辛いからって逃げ出すのか」「お前は勝ちたくないのか?」「勝つためには辛い事を乗り越えなければ強くなれないぞ」と言われ続けたそうですが、彼が最後に顧問へ言った言葉は「バスケが嫌いになりました。もう勝ちたいとかそんな感情は湧きません。本当に部活を辞めたいです。」という言葉でした。

健全な体でなければ健全なメンタルは育たない

顧問は、彼を辞めさせようとしてミットのメニューを与えたわけではなく、彼の心と体を強くしたくてメニューを与えたことには間違えないでしょう。

しかし、今回のケースからも分かるように、健全な精神力は健全な体でなければ保つことができません。精神力は無理やり鍛えようとして鍛えられるほど単純なものではないのです。

それどころか、彼のように、心も体もボロボロにされて部活を辞めてしまうケースがありますし、スポーツをする意義を見失ってしまった選手にとって、スポーツは苦痛でしかなくなってしまうのです。

私たち大人は、このような問題を軽視してはいけないのではないでしょうか。

スポーツ指導に携る大人達が、子供のメンタルを削いでしまっている可能性があるということをしっかりと理解する必要があると思います。

404 NOT FOUND | 子供のためにできる108のこと
スポーツを頑張る子供のために「考える事の大切さ」「考える事の楽しさ」を発信しているサイトです。

大人の正論が逆効果になる理由

部活で使う野球ボール

今まで頑張ってきたスポーツ(部活動)を辞めたいと言ってきた選手は、それまでにかなり苦しんで、かなり悩んできた期間があるはずです。

親や顧問へ「部活を辞めたい」と言うに至るまでに、本人の中では色々な葛藤があったに違いありません。

部活を辞めることへの罪悪感、今まで支えてくれた親への申し訳ない気持ち、チームメイトへ対する思いなど、親や顧問には計り知れない思いがあることでしょう。

たとえ練習が辛いと嘆いたとしても、目標や夢、なりたい自分をイメージすることができていれば、辛い練習にも耐えられるものです。

指導者や親が「社会に出てからは、”辛いことはしたくない”は通用しないぞ」などと、辞めてはいけない理由で部活を続けさせようとしても、また同じような悩みを抱えてしまう可能性が高くなってしまうだけです。

つまり、いくら大人が正論を並べたところで、子供のモチベーションを保つことはできないし、さらに子供を苦しめてしまいます。

子供達が部活を続けていくうえで本当に大切なことは、辞めてはいけない理由で続けさせることではなく、自分自身が辞めたくない、続けたいと思える希望や夢、なりたい自分を持って前へ進むことなのです。

大人がするべき対応とは

子供達が成長をしていく中で、悩むことや迷うことは多くあるだろうし、失敗や挫折も含めて様々な体験をしていくと思います。

その際に親がしてあげられることは、進むべき道を教えてあげることでもなければ、転ばないように手を握ってあげることでも、転んだ我が子を抱きかかえることでもありません。

子供が転んでも自分で立ち上がれる 「強さ」と「自信」を持たせる言葉かけをしてあげることなのです。

そのためには、子供の「現在」を否定するような言葉かけをしてはいけません。伝えている意味は同じでも、言葉のチョイスで受け取る側の思いは大きく変わってしまうものなのです。

スポーツをする子供の挫折|大きく影響する親のあり方とは
心が挫け折れ、そのまま自信と希望を失って、好きでしていたスポーツが嫌になったり、辞めてしまう子供もいます。そしてその裏には、子供の周りを取り巻く環境や、大人の言動が影響しているケースも少なくありません。

続けることだけにこだわらない

「継続は力なり」という言葉がありますが、私も本当にそうだと思います。

しかし、続けることにこだわりすぎて本来の楽しみや意義を見失っては、ただ辛いだけです。

長い人生に辛い経験もあって当然ですが、その裏で子供が納得しているのか、子供の欲求が満たされているのか、先に見える景色に希望を抱けているのかというのは、とても大切なことなのです。

それを完全に見失って、違う新しいものに希望を向けているのなら、行先を変えるのもひとつの方法ではないでしょうか。

大切なことは「何が何でも部活を続けなければならない!」と言うことではなく、子供自身が前向きであるか、次へのステップが見えているのか、希望に満ち溢れているのか、という事なのです。

まとめ

今回は 「子供が部活を辞めたいと言ったら、親や指導者はどう考えるべきか」についてをお伝えしましたがいかがでしたでしょうか。

親や指導者が子供へ言葉かけするときに一番厄介な感情が、結局は「自分のため」「見栄のため」という裏の思いです。

子供のためだと言葉をかけていても、実はその他大勢から外れてしまうことへの恐怖心や、周りへ対する見栄などが入っていることが多々あります。

しかも、親や指導者はそのことに気づくことなく、「あなたのためよ」と言いながら無意識に自分の思いを押し付けてしまうことがあります。

そのことをしっかり頭で認識したうえで子供の話をもう一度聞いてみると、また違う言葉かけが出てくるのではないでしょうか。