こんにちは、メンタルトレーナーの葉月です。
今回のテーマは 「スポーツをする子供の不調」についてです。
子供達がスポーツや習い事をしていれば「調子の良い時期」と「調子の悪い時期」が訪れるのは当然のことで、これはセンスや能力の差に関係なく誰にでも訪れる「バイオリズム」です。
そして選手として成長できるかどうかは、調子の良い時にどれだけ頑張れるかよりも、調子の悪い時に「いかに前を向いて進めるか」かで決まると言っても過言ではありません。
しかしそれを実際に行動へうつすには、安定したメンタルと強い意思がなければ体が動きませんし、時には「スランプ」や「燃え尽き症候群」などが原因で心身共に休息が必要なこともあります。
今回は保護者の方からいただいた相談メールをもとに「スポーツをする子供の不調に対する考え方と対処法」について考えていきたいと思います。
思春期の息子に対する接し方が分かりません。保護者の方からのご相談
現在中学2年生の息子(竜也)がいます。竜也は小学校4年生からバスケを始めたのですが、引退を半年後に控えた今「バスケが楽しくない、辞めようかな…」と言ってきました。
竜也に原因を聞いたのですが「スタメンから外されたから」それしか話してくれません。
竜也はバスケが大好きで私はてっきり大学まで続けるんだろうと思っていましたし、今この時期に辞めたいと言ってくるなんで予想もしていませんでした。
スタメンから外されたのも今回が初めてではないし、ミニバスの時はもっと采配に対するストレスがあったはずですが、それも竜也自身がしっかり乗り越えてきました。
竜也は少し頑固な部分がありますが、これと決めたことは最後までやり抜いてきたし、私の子供とは思えないほど頑張り屋さんで、とてもじゃないけれど怠けたくてこのような発言をしたとは思えません。
朝練も誰よりも早く行き、学校の三者面談ではいつも「将来の夢はBリーグ選手です!」と笑顔で言っていましたし、どこでどのように歯車が狂ってしまったのか私にはさっぱり分かりません。
以前に比べて元気がなくなったことも気になり、親としてはとても心配でなりません。
顧問の先生に相談してみたのですが、確かに最近様子がおかしかったようなんです。子供同士でトラブルがあったようには見えないけれど、竜也自身が集中できていないというか、楽しめていないというか、何か「悩み」や「迷い」があるんだろうな…という印象を受けたようです。
そして顧問の先生からは「スタメンから外されたから楽しくなくなったというよりは、楽しめなくなってしまったから練習にも試合にも集中できなくなってスタメンから外されたという順番の方が正しいかもしれません。」と言われました。
葉月さん、これがスランプと呼べるものなのでしょうか?こちらのサイトでスランプに対する記事を読みましたが、思春期の竜也はとにかく会話をしてくれないので、どうやって接してあげればいいのかが分かりません。
小学生の時は素直で私の話をきちんと聞いてくれたし、色々話してくれたのに今では私が話しかけても煙たがるばかりで…。私の接し方に問題があるのかもしれませんが私はどうしてあげることが一番いいんでしょうか。
何かアドバイしてをいただけないでしょうか。よろしくお願いいたします。
思春期の子供について
私も息子2人育てましたが、思春期の男子って口数が減るし本当に何を考えているのか分かりずらいところがありますよね。
この時期の子供達は親に反抗的な態度を見せることがあるため、親は不安から「子供が望まない行動」をしてしまうことがあります。そして子供の口数が減ってしまうのは、このような親の行動が原因になっていることも少なくありません。
この時期の子育ては大変で一筋縄ではいかないと思われがちですし、実際に子供のタイプや考え方、感受性なども様々で悪戦苦闘するお母さんも多くいらっしゃいますが、実は子供と親が関わる上で最も大切なことは非常にシンプルだったりします。
親は知識と経験が子供よりもあるため、つい子供の先を歩いて「こっち!こっちの道が安全よ!」と子供を誘導しようとしてしまうことがありますし、子供が目標や夢を抱いても「そんな無謀な…」「もっと現実を見なさい」と否定的な意見を言ってしまうことがあります。
しかし子供がそのことに疑問を思わずついてくるのは、少なくとも小学生までです。
思春期を迎えた子供達には「自立心」が芽生え、様々な悩みや不安を抱えながら「何か」と奮闘しています。
そしてそれは親だけでなく本人もその「何か」が分からなくてイライラしたり、周りにつらく当たったりしてしまいます。
その時に親ができることは 「見守ること」です。何が助言をしたり手助けをしたくなるかもしれませんが、とにかく見守って、その中で子供が今どんな気持ちでいてどんな状態なのかを見極めてあげることです。
子供の口数が減る原因
思春期を迎えた子供が自分の意見を言わなくなったり、何か聞いても「知らない」とか「どっちでもいい」などと口数が減ってしまう場合は、「自分の意見を相手に伝えることが不安」「どうせ自分のことは理解してもらえない」「どうせ口うるさく言われるだけだから」などという感情を抱いている場合があります。
最近では子供達に「自主性」や「主体性」が大切だと考えられているため、大人たちは「自分で考えなさい」と子供達に言うものの、いざ子供達が自分の考えで動こうとすると「ダメダメ!そっちは危険よ」「こっちの方が安全だからこっちにしなさい」と子供の意見を否認してしまうことがあります。
すると子供は「どうせ僕の意見なんて聞いてくれないし」「どうせダメって言うんだろうから」と大人に意見しないようになってしまうのです。
子供と関わり合う中で親が一番大切にしなければならないことは「最後まで話を聞くこと」だと思いますし、無意識であっても親が「憶測」や「自分の経験」から子供の行動や感情をコントロールしないようにすることが大切です。
子供の今の状態を把握する
竜也くんの気持ちや状態を整理すると「バスケが楽しくない」「スタメンから外されて辛い」ということ。そして顧問の先生からの情報では、スタメンから外される前から様子が変で、スタメンから外されたのは技術面の問題でもないし、ポジションや他の選手が急成長したからでもないということですよね。
となると「バスケが楽しくなくなってしまった根本的な原因」を追求してそこを改善しなければ、竜也くんが抱えている問題は解決しないということになります。
今回は竜也くんの状態に対する今までの情報を知りたかったため、お母さんに許可を得て竜也くんと個別にお話をさせて頂いたのですが、その中で分かったことは、自分がいくら努力してもチームとしての力が伸びないことに対する不満、そして親からの「また負けたの?負け癖ついてない?」という言葉に対する苛立ちなどの問題を抱えているということでした。
竜也くんには「スポーツをすることの意義」と「本当の意味での成長とは何なのか」について話し、これから自分が本当はどうしたいのかを第一優先に考えるよう伝え、お母さんにはチームの勝敗も大切だけれど、竜也くん自身の努力や頑張りに対する承認・尊敬を伝えてほしいとお話させていただきました。
私もスポーツをしていた息子達に熱心になりすぎて、結果的にそれが息子のプレッシャーとなり「今度の試合には来ないで。今度の公式戦までに状態を良くしておくから。」と言われたことがあります。
それは私が無意識のうちに「悪い状態=失敗」「良い状態=成功」と子供に思わせるような言動をしていた結果が招いたことなんだと反省しました。
メンタルトレーナーとしてコーチや保護者の方、選手のカウンセリングをしているにも関わらず、自分の子供のことになると「期待」や「希望」が優先されてこのような状態を起こしてしまったんだと思います。
そしてこのようなことは誰にでも起こりうることだし、それがここで気づけたということは、竜也くんのお母さんがしっかり子供と向き合っている証拠だと思います。
これからも竜也くんがバスケの楽しさを忘れず、親子で楽しい学生生活が送れるように心から応援しています。
スポーツをする子供の不調について
では最後にスポーツをする子供の「心の不調」について考えていきたいと思います。
スポーツをする子供達が抱える問題には「挫折」「スランプ」「燃え尽き症候群」「イップス」などがあげられますのでそれぞれの特徴についてお伝えしていきたいと思います。
挫折について
心が挫け折れ、そのまま自信と希望を失って、好きでしていたスポーツが嫌になったり、辞めてしまう子供もいます。
そしてその裏には、子供の周りを取り巻く環境や、大人の言動が影響しているケースも少なくありません。
スランプについて
親にとって、子供が苦しんでいる姿を見ることはとても辛いことです。それは同じ親としてとても共感できます。
しかし、スランプを乗り越えるのは子供自身だし、親としての役目は転んでいる子供を抱き起すことでも、「立ち上がりなさい!」と叱咤することでもありません。
燃え尽き症候群について
子供達は達成感を得ることで、スポーツにどんどん熱中していくができますが、いくら努力しても結果がついてこなかったり、精神的なものが原因となって、好きでしていたスポーツが嫌になったり、やる気が出なくなってしまったりといったことがあります。
イップスについて
精神的なものが原因で、パフォーマンスの低下、運動障害を起こすことが「イップス」と呼ばれ、イップスはプロのスポーツ選手だけでなく、スポーツを頑張る子供達のことも時に苦しめています。