こんにちは、メンタルトレーナーの葉月です。
今回のテーマは 「子供を本気にさせる目標設定」についてです。
私たち大人も、何か新しいことに挑戦したり、何かを成し遂げようとする時には、モチベーションや目標があって、そのことを達成したいと思う気持ちが「意欲」「やる気」を高めてくれます。
逆にするべきタスクを課せられても、そこに内発的なモチベーションや目標がなければ、何もかもが曖昧となって意欲の低下、やる気の低下につながります。
そのため「目標がある選手」と「目標がない選手」とでは、やる気にも集中力にも大きな差が生まれるため、子供達がスポーツをするうえで「目標を持つ」ということはとても大切なことです。
ただし、目標の立て方に問題があれば達成することは難しいし、モチベーションの低下につながるケースもあるため、一人一人の実力や能力、意欲に合わせた自発的な目標設定が必要となります。
そこで今回は、私が実際にスポーツの現場で使っている「目標達成シート」を利用して、「正しい目標設定の仕方」についてお伝えしたいと思いますので、最後までお付き合いいただければと思います。
目標を立てる目的
皆さんはベストセラー「思考は現実化する」の著者、ナポレオン・ヒルをご存知でしょうか。
彼は1930年代にこう言いました。
「頭のなかで考えたことを、心から信じられるのなら、人はそれがどんなことでも達成できる」
当時はこの言葉に対して否定的な意見が多く聞かれましたが、今現在の脳科学の力では、 脳がどのように働いて、目標や夢、願いを達成できるかを証明できるようになりました。
目標を掲げることは、子供のやる気を引き出すことでも有効ですが、本来の目的は「なりたい自分になって夢を現実化」することにあります。
目標を明確にすれば脳がゴールを目指してくれる
子供達が目標を立てる時に大切なことは、するべき課題を考えることではなく、まずは「叶えたい夢」「成し遂げたい目標」「なりたい自分」をイメージすることです。
人の脳は思いのほか優秀で、情報に対してどのような行動をとるべきかを考え、心と体を動かしてくれます。
スポーツをする子供達にとって、達成したいと思えることが明確にされている子が強いのはこのためです。
もっと分かりやすく説明するために、車のナビで例えてみましょう。
ナビは目的地さえ明確にしていれば目的地までどのように行けばいいのかを導いてくれます。
スポーツをする子供達の脳もこのナビの仕組みと同じなのです。
「達成したいこと」「目標」「夢」が明確にされていれば、脳が意欲を起こさせ自分がどのように行動を起こすべきなのかを導いてくれます。
道を途中で間違えても、障害物があっても、目的地が明確であれば必ず導いてくれるのが「脳」なのです。
「自分にできるわけない」「どうしたらあんなにすごい選手になれるのか分からない」「どうしたら上達するのか分からない」ではなく、 まずは「どんな自分になりたいか」「自分の夢とは何か」を考えることが大切です。
夢に向かって努力をするのはそれからなのです。
目標が達成できない主な原因
子供達が目標を設定する時に、誰かから要求されたことや希望されたことをベースにしていないでしょうか。
「コーチが次の試合では優勝を目指せと言っているから、目標は優勝」「親が学年で30番以内には入りなさいと言っているから、30番以内には入らないと」このような目標設定の仕方であれば、たいていは失敗に終わる事が多いものです。
それが心の底から「誰かの喜ぶ顔が見たい」「チームに貢献したい」と思えるものだったらまた話は違いますが、「自分の欲求」ではなく「人の欲求」から生まれた目標設定では、モチベーションを長く保つことは難しいですし、途中でやるべきことが見えなくなってしまう可能性があります。
そして、子供自身が「自分はこうなりたい、だからそのためにはこうする」という自分のための目標を立てることで、自然にやる気が引き出されますし、本当に叶えたい夢や目標は子供達を本当に進むべき道へと導いてくれます。
大きな夢を見るだけでやる気は保てない
「全国大会に出場したい」「プロのバスケット選手になりたい」「オリンピック選手になりたい」と大きな夢を抱くのはとても素晴らしいし、とても大切なことです。
しかし残念ながら、人の脳は「遠い先の夢」を抱くだけで日々の辛い練習に本気になれるほど単純なものではありません。
漠然と大きな夢を抱くだけでは、モチベーションを長く保つことは難しいということです。
心理学の研究からも「目標のハードルが高すぎる」「次の景色が全く見えていない」といった状態では、「人は前に進もうという意欲さえ沸きにくくなる」ということが分かっています。
モチベーションを上げるために掲げた目標のはずが、心のどこかで「そもそも達成は無理ではないのか?」と思ってしまえば、モチベーションを保つことは難しくなってしまうということです。
そこで注目すべき点は 「夢にたどり着くまでの過程である課題」がしっかりされているかという事です。
つまり夢や目標が明確にされたあとは、その過程を着実にクリアしていく必要があるということです。
やる気を起こさせるにはまず行動
せっかく目標を立てても「来週から始めよう」「もっと自分に自信がついたら始めよう」「環境が整ったら始めよう」「高校から頑張ろう」などと今できる努力を怠り、準備期間に時間を費やしてしまうことがあります。
そうすることでやる気はどんどん低下し、結局は何も成し遂げることができないまま終わってしまうというパターンはとても残念です。
大切なことは「なりたい自分」「成し遂げたい目標」が決まったら すぐにその場から始めるこです。
目標を成し遂げられるかは、 このスタートダッシュが大きく左右すると考えていいでしょう。
たとえ裸足だろうが、靴のサイズが合っていなかろうが、とりあえず一踏み出すことが大切なのです。
自分の足に合っている靴はスタートしてからでも探すことができますし、スタートをきってみると意外と自分にピッタリの靴だったと思えるかもしれません。
それはスタートしなければ誰にも分からないことなのです。
いつまでも靴を探しているだけでは前へ進めずゴールが見えないまま終わってしまいます。
始めてから気づく事もたくさんある
子供達がスポーツをするうえで、目標を掲げて達成するまでには決して平らな道だけでなく、いくつもの障害物があったり思わぬトラブルやアクシデントもあることでしょう。
その中で、心から目指していたはずの目標や夢が違うものに変わってしまうこともあるかもしれません。
結局のところは、スタートを切らなければ、始めてみなければ分からないということです。
一つのことを継続していくことはとても大切ですが、それと同時に心から目指せなくなった目標にしがみつくことが、必ず正解だとも言い切れません。
だからこそ、思い立ったらすぐにでもスタートすることが大切なのです。
一日延ばしを習慣にしない!
昔、ナポレオン・ヒルがこう言いました。
「あなたが失敗する理由は、一日延ばしの習慣にある」
そうです。これって本当にシンプルだけど、目標を達成できない人、やる気を保てない人の共通点です。
私自身も昔はそうでした。嫌なことや辛いことはつい後回しにして、楽しそうなことから手をつけてしまう。
その結果、自分には何が成し遂げられたのだろうか・・・と数年後に後悔が襲う。
今日の怠りを、昨日や明後日で後悔することはないけれど、もう取り戻せなくなった時に大きな後悔として自分自身を襲うのです。
目標達成シートの活用術
では次に目標達成シートを活用し、夢や目標を叶えるためのステップを踏んでいきましょう。
夢・目標
ここで大切なことは、本当に本人が心から望むものであるという事です。
他の仲間がそうしているから、コーチがそうしろと言っているから、親が望んでいるからという理由では、この先のモチベーションは保てませんし、この先で記入する「ないたい自分」までもが曖昧なものになってしまいます。
そのため子供達がきちんと自分でイメージできる目標を書くことが大切です。
1ヶ月後どんな自分になっていたい?
ここでは「どんな自分になりたいか」を考えます。
夢や目標を立てた後は、どんな準備をして、どんな自分になっていくかが大切で、このことを定期的に確認してイメージしていくことが、モチベーションを低下させないために必要です。
「〇〇先輩みたいになりたい」など身近にいる憧れの先輩を目標にしてもいいですし、プロ選手をイメージしてもいいですし、「誰にも抜かれないディフェンダーになる」など自分自身をイメージしてもかまいません。
目標を達成するとどんないいことがある?
次に目標を達成することで「どんなワクワクするようなことが待っているのか」をイメージさせ、未来を鮮明にイメージさせましょう。
人が意欲を高めるためには、未来を鮮明にイメージさせることが大切で、本当に得たいもの、得られるものをイメージすることで子供達のやる気を高めることができます。
目標を達成するために必要なトレーニングは?
なりたい自分と行動がリンクしていなければ、夢や目標を達成することはできませんので、ここでは「なりたい自分」になれるための行動目標を考えます。
自分の目標を達成するために、何を準備して、何をしていけばいいのかを考えることで、単なる夢や目標ではなく現実的に「成し遂げたいこと」に変わっていきます。
POINT「ベストを尽くす」「気合いを入れる」「いつでも集中」など、このような精神論は、曖昧な決意表明であって行動目標ではありません。第三者から見ても評価ができる明確な行動目標を設定することが大切です。
そのトレーニングで一番辛いことは?
目標を立てると「つまづく時期」が必ず訪れます。
目標を立てた時はやる気十分でも、全てが順調にいくことの方が珍しいですし、トレーニング自体に飽きがきたり、「今日はいいや」が「今日もいいや」になって、結局成し遂げられなかったというケースも少なくありません。
そのことを防ぐためにも、最初から「その辛さを予測して準備」をしておくことが大切です。
どのようにすればその辛さを乗り越えられると思う?
途中で挫折しなように予測した後は準備です。
挫折しそうになった時は「目標シートを見返す」「もう一度なりたい自分をイメージする」「仲間と声を掛け合う」「道具をいつも見える所に置いておく」「朝練に行きたくなくてもとりあえず顔を洗う」「トレーニングを終えたらコーチに報告の連絡をする」など自分に合った乗り越える方法をあらかじめ設定しておくと挫折しにくくなります。
目標を達成するためのポイント
では次に、目標を達成するためのポイントと注意点についてお話ししたいと思います。
期日や期限を決める
今回の目標設定シートでは「1ヶ月」という期間を設定しました。
期日や期間を決めておかないと曖昧なものになってしまいますので、期日や期間の設定は重要です。
もちろんやっている途中で難しいと感じるようになった部分は後から訂正すればいいのです。
もちろん子供は自分の言い訳を許してはいけませんが、親が結果に完璧を求めすぎることもいけません。
大人達が完璧を求めてしまえば、子供達は挑戦することに消極的になってしまいます。
始めから上手くやる必要はありませんし、始めることをしなければ、何も得ることはないのです。
自分の言い訳を許してはいけない理由
目標をクリアしていく中で「自分の言い訳を許してはならない」とお伝えしましたが、その理由は、言い訳は成長していくうえで邪魔でしかないし、自分に対する約束を守れなかった事実が自信の喪失につながってしまうからです。
「仲間がミスをするから」「練習時間が短いから」「宿題が多すぎて」「時間がなくて」このようなことが本当に問題となって、目標を成し遂げることができないのなら、誰も何も達成できません。
成し遂げられなかった問題は全て自分にあるのです。
つまり、成し遂げられない時は、自分自身の考えを変えなければ前へ進めないという事。そのためには、それを人のせいや環境のせいにする言い訳を許してはいけません。
上手くいかない時は目標を変えてみる
成功を手にしたトップアスリートは「自分を信じて努力を続けていれば、結果は後からついてくる」ということを知っています。
しかしそのことをまだ体験していない子供達は、途中で心が折れて諦めてしまったり、やめたくなってしまうことがあります。
やってもやっても強くなっている実感が湧かず、モチベーションが上がらない時は「技術の向上」や「試合に勝つ」などの結果の目標ではなく、「毎日、シュート50本練習」「毎朝のランニング」など、思い切って行動の目標に変えてみることも方法のひとつです。
その際に気をつける点は、行動の目標を大きく設定し過ぎないことです。
張り切り過ぎて大きな課題を設定してしまえば、それが苦痛となり、結果の目標と同様にモチベーションが低下してしまう危険があります。
まずは、今の自分より少し頑張れば達成できるという無理のない設定から始めるといいでしょう。
指導者や保護者の皆さまへ
選手である子供達は、常にコーチや監督、もしくは熱心なお父さんやお母さん達から今まで以上の能力を求められ、体力や技術を上げるためによりハードな練習を求められています。
そこで子供達にとって大切なことは、自分の可能性の枠を自分で決めない、つまり 「自分の可能性を無限に信じられる気持ち」を持てているかという点です。
子供達が自分の持っている可能性が信じられるかは、周りの大人達の言葉かけがカギとなります。
たとえば「そんな夢みたいなこと言ってないで現実を見なさい」「あなたにそんな能力あると思っているの?」などのような言葉は、子供達の自己肯定感を低下させ成長の可能性を狭めてしまいます。
つまり子供達には「前へ進めるための言葉かけ」「可能性を広げる言葉かけ」をしてあげることが大切です。
まとめ
今回は 「スポーツ心理学|目標設定で子供を本気にさせる6つの法則」についてお伝えしましたがいかがでしたでしょうか。
子供達が目標に向かってモチベーションを保つことは容易なことではありません。
何をやっても上手くいかない時は、途中でやめたくもなる時もあるし、投げ出したくなる時もあるでしょう。
そんな時は、目標を見直すこともスポーツを続けていくうえでは大切なことです。
小さな目標一つずつをクリアしてくことで、大きな夢へ一歩ずつ近づいていることでしょう。