こんにちは、メンタルトレーナーの葉月です。
今回のテーマは「スポーツや習い事をする子供の上達」についてです。
私はメンタルトレーナーとして、スポーツ少年団や中学の部活動で子供達のスポーツ指導に携わっておりますが、ずば抜けて上達を見せる子供達にはある共通点がありますし、逆に思うようなプレーが出来ずに思い悩む子供達にもある共通点があります。
それはいずれも「自己肯定感の高さ」に根本的な原因が隠れているということです。
自己肯定感とは言葉の通り「自分を肯定できる感情」のことを意味し、「自分自身を大切な存在だと認めることができる」心の状態で、子供達が健やかに育つためには絶対に欠かせないものになります。
逆に「自分を否定的に考えてしまう」心の状態を自己否定感と呼び、自己否定が強い子供達は自分に自信が持てないため、周りからどうのように見られているかを異常なほど気にし、他人の言動に過敏に反応してメンタルを乱れやすくしてしまいます。
この自己肯定感に問題がある場合、家庭環境に何らなの原因があるケースは多いですし、親が「子供のために」と思ってしている振る舞いが、不本意ながら子供の自己肯定感を低下させているケースがあります。
今回はこれらのことを踏まえ「子供がスポーツや習い事で上達をみせる親の育て方と考え方」について考えていきたいと思いますので最後までお付き合いいただければと思います。
子供の自己肯定感に関する調査報告
下のグラフは、ある地域で行われた「子供の自己肯定度などに関する調査報告」をもとに作成したものです。
- 「あなたは自分のことが好きですか?」
- 「あなたは人から必要とされていますか?」
と609人の子供達に聞いたところ、自分を好きだと答えた子供は、355人で半分以上ですが、残りの254人は自分を好きだと思えていないという結果が出ています。
この数が多いのか少ないのかは、人それぞれの価値観かもしれませんが、子供の心の成長において自己肯定感を育てるということが子供達の成長に大きな影響を与えるということは明らかですし、自己肯定感が高い子は前向きにどんどん新しい事へ挑戦し、技術面でも素晴らしい上達を見せてくれます。
子供の上達に影響する大人の関わり
日本では昔から武道の世界において「心技体」の全てが重要だとされてきましたし、現在ではほとんどのスポーツにおいてメンタルトレーニングが重要とされています。
心の状態が良い時は「体」にも「技」にも良い影響を与えますし、逆に心の状態が悪い時は「体」にも「技」にも悪い影響を与え、本番で本来の実力を発揮できない状態をつくってしまいます。
それは全ての人が心を持つがゆえに起きてしまうことで、それに対するサポートができていなければ、「心」「体」「技」の全てが互いに影響し合って、体に不調を感じれば心と技に、技に不調を感じれば心と体に不調をきたすことになります。
つまり、スポーツの上達を目指すのに「心技体」全てを整える必要があるということで、それらに必要な「自己肯定感」「自主性」「自信」「意欲」などの核を親がつくってあげるサポートが必要です。
子供の可能性を狭める言葉かけ
私がメンタルトレーナーとして携わった中学の男子バスケットボール部に「試合では練習してきた60%程度の力しか発揮できなくて当然」だと選手へ伝える顧問の先生がいました。
私は顧問の先生に「たとえそれが統計的に出た数字だとしても、そのような伝え方はマイナスに作用することの方が多いため、そのような言葉は避けてほしい」と伝えました。
いかに最大限の力を発揮できるようにするかがメンタルトレーナーとしての役割だし、そのように指導する立場の人間が子供の限界を先に決めてしまえば子供達は本当に60%の力しか発揮できない選手になってしまいます。
そしてこのようは表現は、お父さんやお母さんにも同じことが言えます。
もちろん過度な期待や願望を抱かれることは、子供達にとって、精神的に大きな負荷がかかってしまう場合もありますが、子供に「ここまですればいいんだ」「自分にはこの程度しかできなくて当たり前なんだ」と思わせる言葉をかけてなりません。
ジュニア世代のメンタルトレーニングには、このように周りの大人の理解が必要となり、私たち大人も「考えることの大切さ」と「考えることの楽しさ」を学ぶ必要があるのではないかと思います。
限界の枠が広がれば可能性が広がる
次は私がメンタルトレーナーとして携わっていた中学女子バスケットボール部のお話しです。
彼女達は放課後の部活動で体育館が使えるのが2日に1回だったため、体育館が使えない日は外でのトレーニングが行われていました。
その中で子供達に「地獄のトレーニング」と呼ばれていたのが、グランドで行われる往復ダッシュでした。
顧問がタイムの課題を与えるのですが、女子はどうしても余力を残す傾向にあり、その結果にいつも顧問は納得いかない様子でした。
子供達からは「そんなタイムそもそも無理だし」と言う声も多く、本当にそこを目標にしている子はいないなというのが私の感じ方でした。
そこで私は、知人が外部コーチをしている中学女子バスケットボール部に合同練習をお願いし、両チーム共にいつもの往復ダッシュを行ってもらいました。
まず相手チームにダッシュをしてもらったのですが、そのタイムはこちらの顧問の先生が出した課題タイムよりも30秒も早いものでした。
私はうちの女子部員にそのことを伝え、いつも通りダッシュしたもらったのですが、多くの部員が自己ベストタイムの記録を出し、数名の部員が顧問が与えた目標タイムを達成しました。
実はそれに一番驚いていたのは、実際に走った本人達でした。
このようなケースからも分かるように、子供達が自分の限界を無意識のうちに設定してしまえば、このようなことが起こってしまうということなのです。
女子選手は余力を残すことが上手
今回のことからもよく分かるように、女子選手は「余力を残すことが上手」で、無意識に余力を残してトレーニングに取り組む傾向があります。
その逆に男子選手は、とことん自分を追い込むことができますし、「もうだめだ」「体が動かない」というオールアウトまで自分を持っていくことができます。
それは、メンタル面でも同じことが言えます。
女子選手が「もうだめだ!」というのは、単に心にブレーキをかけているだけで、実はもっと成果をあげることできるし、もっと体を動かせる状態であることも多くみられます。
子供の可能性を最大限に引き出す育て方とは
スポーツや習い事の上達には、「自己肯定感」に併せて「可能性を広げる思考」に対する大人の振る舞いが大切だとお伝えしました。
では私達は、子供達の自己肯定感を育て、これからの可能性を広げるためには、どのように関わることが大切なのでしょうか。
次はスポーツや習いごとの上達に欠かせない「心のつくり方」に関してお伝えしたいと思います。
自己肯定感を育てる言葉かけ
スポーツをする子供が自己否定を高めてしまう原因で最も多いパターンが「失敗を責められた過去」「負けを責められた過去」です。
本来であれば、「失敗」や「負け」とは何かに挑戦したから後に起きた結果であって、子供達が勇気を持って挑戦したことは、結果がどうあれ「挑戦した勇気」を大人は受け止めてあげなければなりません。
親は子供達に「自主性」や「主体性」、「意欲」や「向上心」を求めて起きながら、いざ子供が自発的に行動して失敗すれば「何やっているの!?」「もっと真面目に考えなさい!」「だからあなたには無理だって言ったでしょ!?」「努力が足りないからこんなことになるのよ!」などと責めてしまう。
このような状態では、子供達の自己肯定感を低下させるだけでなく、「不安」「恐怖心」などネガティブな感情を抱かせ、自己否定を強くさせてしまう危険があるため、大人達は子供の存在自体を肯定する言葉をかけてあげる必要がありますし、逆に子供が自分の存在を否定されたと感じてしまうような言葉かけは避けるべきでしょう。
まずは親の心を整える
昔と比べ、様々な教育論や子育て論が世に出回っています。もちろんそれらの理論はどれも大切だと思いますが、実際のところ、それらを実践できるかは理論の習得だけでは不十分な場合も多くあります。
たとえば「子供のやる気を引き出すには〇〇が重要です!」「子供の心を鍛えるためには〇〇が必要です!」などの子育て論を実践しようとしても、それを行う親の心理状態が不安定だったり、イライラしている状態だと、子供達にもその気持ちが伝わり、ネガティブな気持ちがそのまま連鎖することで、失敗に終わってしまうことがあります。
逆に親がワクワクして楽しそうにしていれば、子供達にもそのような気持ちがそのまま伝わり、前向きな姿勢を見せてくれるようになるでしょう。
そのような家庭環境は、子供達の「やる気」「意欲」「チャレンジ精神」「自主性」「自己肯定感」を育ててくれますし、その結果スポーツをより楽しいものにさせてくれるでしょう。
自分の強みを認識させる
スポーツ少年団の懇親会に出席した際、あるクラブチームの監督がこんな話をしてくれました。
「実は最近、伸び悩んでいる子供達や、プレーに消極的になってきた子供達を見て、自分の指導方法に疑問を抱いて悩んだ時期がありました。僕は何とか打開策がほしくて、うちの学校に在中しているスクールカウンセラーの先生に子供達と話をしてもらいました。
まず先生が子供達に質問したのは、「自分のプレーで改善したい点はある?」というものでした。
子供達は「ディフェンスを抜かれないようにする」「もっとスタミナをつける」「もっと積極的になる」「シュートを外さない」などたくさんの課題が上がりました。でも「自分の強みは?」という2つ目の質問に子供達は全員黙り込んでしまったんです。
僕が先生に言われたのは「伸び伸びとプレーできる選手は、自分の良さも知ってプレーをしています。でもこの子たちは、自分の良いところも自分で受け入れられず、自分のマイナス面ばかりを気にしているように感じます。これからもっとこの子達を育てたいのであれば、この子達の自己肯定感や自主性を育てる言葉で指導をしていくことをおすすめします。」と指導されてしまいました。
正直、最初は若造の先生に言われてムッときましたが、技術面だけでなく、メンタル面を育てるのも指導者の役割なんですよね。それからは、スクールカウンセラーの先生に助けてもらいながら、僕も指導者として子供達のメンタル面を重視した指導をつもりです(笑)。」
現在ではメンタルトレーニングを取り入れた指導を心がけ、自分の指導意識を変えることで、子供達の目も変わってきたと話してくれました。
大人は子供の欠けている部分や出来ていない部分を見つけて指摘し、改善しようとする傾向にあります。
もちろん子供が自分の間違えに気づいていない場合はそのような言葉かけも大切ですが、自分の欠けている部分や出来ていない部分は親でなくともコーチから指摘されることも多いし自分で気づくケースも少なくありません。
しかし、自分の強みや良い部分は周りが認めて声で伝えてあげなければそれを受け止めることができない子供もいます。
子供の短所を長所にしてあげられるのはお父さんやお母さんだし、そのことで子供達は安心してさらに成長することができ、自分自身の可能性を最大限に広げることができるのではないでしょうか。
最後に
自己肯定感は子供達が健やかに育っていくために絶対に欠かすことのできないものです。自己肯定感が低ければそれだけで社会に出てからも困ることは多くあります。
自己肯定感が低い人は「コミュニケーション能力」が低いという傾向があります。人と人が信頼関係を築き上げる中でミュニケーションは絶対に必要とするものです。
お父さんやお母さんは、お子さんと自分自身としっかり向き合って、自己肯定感がしっかり育つ子育てを楽しむことが大切です。