こんにちは、メンタルトレーナーの葉月です。
今回のテーマは「集中力を高める方法」についてです。
試合中によく見かける場面の一つに、コーチが子供達へ「おい!集中しろ!」、親が子供達へ「集中!集中して!」と叫んでいる姿があります。
この光景を見るといつも思うのですが…
「集中しろ」と言われてすぐに集中できるのなら子供達だって最初からしていますよね笑笑
ただ子供達にとって「集中しろ!」と言われる事は「目の前にあるリンゴの皮を念力でむけ!」と言われる事と同じくらい実際の行動に移しにくいものですし、そもそも「集中」って分かっているようで本当の意味を分かっていないため、「集中しなければ!」とそのことばかりが脳を占領し、さらに気を散らしてしまうというケースが多く見られます。
子供達が集中できていないのには理由があり、まずはその根本的な原因となるものを取り除く必要があります。
しかしその原因を本人も理解していないことが多いため、苦戦してしまうというわけです。
今回はメンタルトレーニングを活用した「 子供が集中力を高めて勝てる心をつくる5つの方法」についてお伝えしたいと思いますので、最後までお付き合いいただければと思います。
集中力とは
スポーツでいう「集中力」とは何かって話ですが、集中力とはその時、その時にどれだけ打ち込んでやれているかで、目の前のことに注意を集中して取り組む能力のことを言います。
よく人が集中できるのは15分だとか、長くても90分だとか言われることが多いですが、オープン大学の心理学者であるジェマ・ブリッグ博士によると、集中できる平均時間は絶対的にものではなく、 全てはその人次第で、それだけ集中力を発揮できるかは、何にどう取り組むかによって大きく違ってくるといいます。
スポーツをする子供達は、達成したいことがあると集中して練習へ取り組もうとするし、達成したいという思いが子供達の集中力を高めてくれます。
そして、そうでない場合は集中力が散漫になるため、集中力を発揮するためには「内発的動機づけ」が必要になるということです。
集中力は途切れて当然
集中力を理解するうえで大切なのは「集中力は途切れて当然」だということです。
始めからそのことを前提として日々の練習を積み重ねる必要がありますし、試合前にはそのための準備をしっかりしておく必要があります。
スポーツをする中で子供達の集中力が途切れる原因には様々なパターンがあり、それに対する課題を克服していくことが大切です。
子供達の集中力を低下させる原因とは
試合中に子供達の集中を妨げる要因には主に以下のものが考えられます。
- コーチや親からの言葉かけで余計なことに注意が向いてしまう
- 緊張や不安に対して集中力を違う方向へ向けてしまう
- 失敗など「過去の出来事」を引きずっている場合
- 勝敗にこだわり過ぎて先の出来事に注意が向いてしまう
そして試合の中でミスを連発すれば、技術的なことで色々考えてしまい、何をどうすればいいのか分からなくなってしまう場合もあります。
それはバスケットボールやサッカーのように時間と共に試合がどんどん進んで行く中では不適切な思考であり、本当であれば目の前の試合に集中できている状態がベストだと言えます。
集中力を高めるためにできること
スタミナが切れることで集中力が途切れる選手は、技術や戦略で勝ちに行かなければなりませんし、日頃から体力面を意識したトレーニングや食事をすることが大切です。
そして試合中に審判のジャッチや相手チームの戦略で心が乱れて集中力が途切れた時は「ルーティン」の動作をすることで気持ちをリセットすることが必要ですし、逆転されて流れが変わってしまった時は選手同士で声を掛け合って集中力を途切れさせないようにする必要があります。
このように「集中力が途切れてしまう原因」を探すために自分達の弱みを理解することが大切ですし、それに合わせて改善していくことが大切で、そのことをまずは大人が理解してそれにあった言葉をかけてあげることが必要です。
試合中に集中力を高める方法
次は試合中に集中力を高める方法をお伝えしたいと思います。
ハーフタイムの過ごし方
バスケットボールは4Qで成り立ち、2Q目が終了して3Q目が始まるまでにハーフタイムが与えられます。そのハーフタイム中で、子供達に意識してもらいたい点が2つあります。
ハーフタイムの過ごし方が「吉」と出るか「凶」と出るかは子供次第です。
いい流れの時はそのままの状態をキープする必要があるし、悪い流れやミスなどは引きずらずにリセットする必要があります。
前半の流れがよかったケースでは、座って休憩したり、寝転んだりしないことをお勧めします。
ハーフタイム中は、水分補給をしたり、ストレッチをしたりして軽く体を動かしているくらいが丁度いいでしょう。
全ての動きを止めてしまえば、次の立ち上がりまでに時間を要し、流れが変わってしまう恐れがあります。
逆に前半の流れが悪かったケースでは、初めからを意識できる「ルーティン」を取り入れるて気持ちをリセットしたり、肩を回してストレッチしたり、深呼吸をして心と体を整えましょう。
集中できていない選手には呼吸法でリラックス
集中できてない子供に「集中しろ!」と言ったり、緊張している子供に「リラックスしろ!」と言っても、それほど効果はありません。
むしろ、今の自分の置かれている状態を否定された子供は、さらにプレッシャーを感じ、余計に状態を悪くしてしまう場合がほとんどです。
それよりも効果的にメンタルを整える方法があります。
それは「呼吸」です。
乱れている気持ちを整えるのに呼吸はかなりの効果が期待できますので、ハーフタイムなどを利用して活用していただければと思います。
やり方はとてもシンプルで簡単です。
お腹を膨らませながら鼻か息を吸って、お腹を引っ込めながら口からゆっくり息を吐いていくだけです。
人は息を吸うと、交感神経が活性化して緊張が高まりますが、息を吐くことで副交感神経が活性化してリラックスすることができます。
開き直ることも大切
試合中に技術的なことをあれこれ考え込んでしまうのは、集中力の低下につながるとお伝えしましたが、ミスや失点に対してどのように対処していくかは、試合の勝敗を決めるうえでとても重要です。
「よし!これからだ!」とすぐに気持ちを切り替えられる選手はいいのですが、「早く切り替えなければ」とそのことに注意が向いてプレーに集中できない選手は、開き直って思いっきり落ち込むということも一つの方法です。
ただしそこには「制限」をつけます。
- ひと呼吸息を吸うときだけ思いっきり反省する
- 10歩進み終えるまで思いっきり落ち込む
- 5秒間だけ目をつぶって落ち込む
このような行動は一見ネガティブでプレーに悪影響を及ぼしそうですが、一度十分に落ち込んで、明確に切り替えて再び集中するというやり方です。
目標や課題を立てて集中力につなげる
勉強にしてもスポーツにしても、漠然と何かに取り組んでいる場合と、「今日はこれを達成する」と目標や課題を意識して行動する場合とでは、集中力に大きな差が生まれてしまいます。
たとえば「英単語を10回ずつ書く」という宿題を出されたとしましょう。
A君は、ただ単に宿題を終わらせるだけでなく、「単語を覚える」という目標を持って宿題に取り組みました。B君は、とりあえず書けば宿題が終わるんだと、何も意識せず単語をひたすら書きました。A君とB君、どっちの子がより集中していたかは、言うまでもないでしょう。
練習中や試合中でも同じです。
試合中にコーチから「集中しろ!」と言われている子供達は、好きで集中していないわけではないのです。
ただ、課題や目標を設定して試合に取り組む子と漠然と試合に取り組む子とでは、集中力に大きな差が生まれて当然だということです。
目標や課題は今日から取り組むこと
何か目標を立てたら「明日から始める」や「次の試合から始める」ではなく、「今日から始める」ということが大切です。
もちろん内容にもよりますが、今から始められることを「明日から始める」ということは、その目標や課題に少なからずハードルの高さを感じている証拠です。
人が何か新しいことをしようとするときに、この第一歩を今からするのか、明日からするのか、次の試合からするのかはとても重要なことです。
目標や課題を決めるだけで何かやり遂げた気になっても、良い結果はついてきません。とにかく最初に一歩を踏み出すことが大切です。
危機感が集中力を高めてくれる
スポーツ少年団でも中学や高校の部活動でも、必ず「最後の大会」がいずれ訪れますが、それまでの過程の中で、子供達がどれだけ「今」を大切にすることができるかは、結果にも大きな影響を与えます。
最終目標まで「後1年もある」と「後1年しかない」と考えるのとでは、同じ1年でも子供達のやる気や集中力には大きな差が生まれます。
つまり「後1年しかないんだ」と危機感を感じることで、練習や試合へ取り組む姿勢が変わりますし、「まだ1年もあるから何とかなるさ」とするべき課題を先延ばしにしては、目の前にある「するべきこと」に注目できずに集中力も続きません。
そこで有効なのが、最終目標にたどり着くまでに「小さな目標」を立てていくことです。
それも「いついつまでに、〇〇を達成する」など、時間制限をつけると目標が明確なものとなり達成しやすくなります。
体のコンディションを整えることも忘れずに
普段からしっかり睡眠がとれていれば、たとえ集中力が低下してきても、脳がそれを補おうとして集中力を復活させてくれます。
ところが睡眠が不足している状態だと、集中力を回復することが難しくなるのです。
また睡眠が十分に足りていなければ、セロトニンと呼ばれるホルモンの分泌量が減少してしまいます。
このセロトニンが不足してしまうと、イライラしやすかったり、集中力が低下すると考えられています。
大人の注意点!改善点の指摘について
スポーツ指導をしてると、どうしても選手の改善点ばかりが目について「なんだそのフォームは」「誰がそんなことをしろと言った?」「そんな体力じゃ話にならん」など、その選手の悪いところばかりを指摘しまうことがあると思います。
中には「何度言ったら分かるのか?お前はバカなのか?小学校からやり直せ!!」とその選手の人格まで否定するコーチも見ます。
もちろん悪い部分を改善していくことも、チームを強くするためには必要なことですが、欠点の指摘ばかりが続けば、選手は成長していくどころか、自己肯定感はどんどん削られて確実にプレーが消極的になっていきます。
だからと言って無理やり褒める必要もないし、無理やり褒めたところで子供達も自分の状態をよく把握しているので逆効果になってしまいます。
ここで大切なのは、選手が分からないことを分からないと素直に言えて、選手自らが指導者から学ぼうとする姿勢や環境を作りあげてあげることです。
指導者や親が「分からない=無能」という声かけや態度をしてしまえば、選手は「分かりません」を言えないまま分かったフリをしてその場をやり過ごす、その結果「何度言えば分かるんだ!」とコーチをイライラさせてしまい、選手はさらに萎縮して自信を失くす・・・と言った悪循環を引き起こしてしまいます。
子供の良いとこを伸ばして悪いところを自然に改善する方法
色々なチームでコーチのスポーツ指導を見てきましたが、私がとても勉強になったスポーツ指導がありましたので、ここで紹介したいと思います。
それは子供達の良いところから伸ばして、自らで改善するべき点を見つけて「改善したい」思わせる、内発的動機づけを発動させる指導方法です。
そのコーチは試合でもよく選手を褒めています。
試合の合間に選手を呼んで何を伝えるかと思って聞いていたら「今のはナイス判断!」「今の挑戦は素晴らしいよ!」と良いところをできる範囲で伝えていました。
試合でコーチが選手を呼ぶ時って多くの場合が「上手くいっていない部分を指摘する」ケースが多いですが、こちらのコーチはまずは「良いところを伸ばすことが大切」だと話しています。
昔は子供達の出来ていない部分に目が向いて、いつも怒ってばかりだったらしいのですが、そのような指導方法では子供達の潜在能力を最大限に引き出してあげることが出来ないと感じるようになり、それからは「褒めて伸ばす方法」をとるようになったそうです。
大人は子供の欠けている部分につい目が向いてしまいがちですが、出来ている部分に目を向けてあげることで、自然と上手くいっていない部分も改善したくなるということなのでしょう。
はじめに「スポーツをする子供達は、達成したいことがあると集中して練習へ取り組もうとするし、達成したいという思いが子供達の集中力を高めてくれます。」とお伝えしましたが、こちらのコーチは子供の意欲を高めると同時に、その意欲を利用して子供達の集中力を引き出してあげているということになります。
最後に
今回は「子供が集中力を高めて「勝てる心」をつくる5つの方法」についてお伝えしましたがいかがでしたでしょうか。
人は目に見えるもの、確信できるものばかりに意識がいってしまいますが、なにか問題が起こる時には、その「原因」とその原因をつくってしまった「きっかけ」があるものです。
子供達がスポーツをするうえで「集中力」は大きな強みとなって、さらに「自尊心」や「自己肯定感」を育むことができるでしょうし、逆に自尊心や自己肯定感が低ければ集中力の妨げになるだけでなく、様々な場面で挑戦する強さを持てなくなってしまうでしょう。