良い指導者に恵まれて好きなスポーツを伸び伸びとしている子がいる一方で、指導者の方に対しての不満を抱いている子供達も少なくありません。
それが少々の事であれば、「あんなこともあったな~」程度の笑い話で終わるケースがほとんどですが、溜まりに溜まったストレスというものは、子供達の身体やプレー自体に大きな影響を及ぼしてしまいます。
やめる子と続ける子
中には、子供が悩んでいる姿を見てどうしたらいいのだろうかと頭を抱えているお父さんやお母さんを見てきましたし、チームを辞めるという決断をせざるを得なかった子供達も見てきました。
しかし、そんな中でも上手いことやり過ごす子供がいるのも事実です。
要は、コーチよりも大人になれる選手がいるのです。
先にお伝えしておきますが、その「やり過ごす方法」が必ずしも正解とは限りません。
しかし、その方法で子供達の精神状態、つまりメンタルが安定するのであれば、それも一つの方法なのではないかと最近では感じるようになりました。
コーチとの信頼関係を築けない原因
子供達にとってコーチとの間に感じるストレスとは、「なぜ僕ばかりが責められないといけないんだ」「信じていたコーチに裏切られた!」「コーチの言っていることのは理不尽だ」などコーチに対して不信感を抱いた時に多く感じるようです。
試合で負けた時に一番落ち込んでいるのは、実際にコートに立って戦ってきた選手である子供達です。
そんな時にコーチが「勝たせてあげられなかった自分」にふがいなさを感じたり、思い通りにならなかった苛立ちから「お前らは何をやっているんだ!下手くそが!」と八つ当たりの言葉を投げかけてしまえば、選手を更に落ち込ませてしまいます。
中には、自分のストレスを解消するかのように、選手の人格を否定する指導者の方もいます。
そうすると、落ち込んでいた子供達は、更に心の傷を深め、負けることに恐怖を感じ、次の試合では必要以上に緊張してしまうという悪循環に陥ってしまいます。
最悪なケースだと好きでしていたスポーツが嫌いになり、やめたいと感じる子もいるでしょう。
ところがコーチ自身も、選手の人格を否定してしまった時、心の底からそう思って言っているわけではありません。
「何度教えても同じことで失敗をする」「期待しているのに中々成長してくれない」そんな焦りや苛立ちからつい言ってしまうのでしょう。
ただ、そんな方は残念ながら、指導者としての自分の立場、子ども達にとって自分の存在の大きさを理解していないのだと思います。
つまり「勝ちたい」という気持ちで頭が占領され、自分の「つい」で出た言葉が子供達の成長にどれほど影響をするかを考える余裕がないのです。
ストレスを溜めずに切り抜ける方法
ここで子供達に知っていてもらいたのが、指導する方の考え方や性格というのは中々変わるものではないという現実です。
これだけメディアで体罰はあってはならないと言われているのに、指導者の中には、いまだに「体罰はあって当然!」と断言している方もいるわけですから、そんな人に変わってもらおうというのは、中々難しい話です。
では、どうすればいいのか…。
答えは指導する側の考え方を変えようとするのではなく、「自分の考え方」を変えることです。そして、お父さんやお母さんは、お子さんの逃げる場所、すなわちお子さんが安心して過ごせる家庭環境を作ってあげることです。
もちろん、子供が重度のストレスを感じ、命の危険性を感じる場合は、チームを変わるなど、違う対処が必要となりますが、そうでない場合は、お子さんが冷静になって、コーチの八つ当たりを受け止めないようにすることです。
そう言ってしまうと、少しコーチを馬鹿にしているようにも聞こえてしまいますが、正直言って致し方ありません。
コーチが指導者になりたてで、これから沢山のことを経験して吸収していこうと、積極的に周りの意見に耳を傾けている方なら今後にも期待ができますが、ベテランで「自分の言動は全て正しい!」と自分を信じているコーチには何を言っても耳を傾けてくれないことが多いです。
もちろん、お父さんやお母さんが「うちのコーチはダメコーチだから聞き流しておきなさい」などと、お子さんがコーチを馬鹿にしてしまうような話し方をしてはいけません。
「コーチも勝ちたくてちょっと感情的になってしまったんだね。バスケを教えるプロでも人へ思いを伝えるのは苦手みたいね。感情的になって酷い言葉を言っていたけど、あれは本心ではないだろうから気にしないで、あなたはあなたのやるべきことをやればいいよ。コーチも今頃言い過ぎたかなって後悔しているわよ(笑)」と前へ進む後押しをしてあげたらいいと思います。
大人でも子供でも、人というのは、ストレスを感じると体中にストレスホルモンを分泌します。
子供に逃げ道がどこにもないと、子供の精神状態はボロボロになってしまいます。
ストレスを溜めずに「流す」ということもメンタルを安定させるには大切なことなのではないかと思います。