試合前の選手にかける言葉「緊張するな・失敗するな」はNGワード

2015年12月11日ペアレーチング

試合をする子ども達

こんにちは、メンタルトレーナーの葉月(@w_haduki)です。

スポーツをする子供達や保護者の方にとって「大切な試合でいかに力を発揮できるか」ということは、大きな課題だと思います。

先日も私がメンタルトレーナーとして携わっているクラブチームで保護者の方から「うちの子って試合になると緊張からすぐ体が硬くなってしまって、何とかしてあげたいんですが、試合前にはどのような言葉かけをするのがいいんでしょうか?」という相談を受けました。

確かにその選手は、練習だとエース級の動きができるのに、試合となれば本来持っている実力を十分に発揮できないことが多く、私も気になってる選手の1人でした。

しかし、それは選手だけの課題ではありません。彼を取り巻く環境や大人の言動も大きく影響しますので、この選手はお母さんからこのように考えてもらえるのはとても幸せなことなのです。

では早速、「試合前の言葉かけ」について考えていきたいと思います。

パフォーマンスの低下を招く言葉かけ

スポーツをする少年

試合会場では、保護者の方や指導者の方がこのような声をかけている場面をよく見かけます。

  • 緊張しないようにね!
  • ミスをしないようにね!
  • 集中力を途切らせないようにね!

子供のことを応援するために掛けたはずの言葉が、逆にプレッシャーを与えたり、緊張させてしまったりと子供の心を乱してしまうケースがあります。

試合前だけに関わらず、子供に掛ける言葉で使ってほしくないのが「〇〇をしてはならない」といった否定文です。

たとえば辛い出来事があった時に、そのことを頭から消してしまいたい、もう考えたくないと思えば思うほど、グルグルと頭の中を駆け巡らせてしまうといった経験ありませんか?

人は否定形の思考ほど行動に移しにくいため「好きな人の笑顔を思い浮かべるな!」と言われれば、頭に好きな人の笑顔を思い浮かべてしまいます。

それと同じで、ミスをしないようにね!と言われれば、脳内にはミスをしてしまっている自分をイメージしてしまうので、不安やプレッシャーを強いものにしてしまうのです。

緊張とパフォーマンスについて

サッカーをする少年たち

スポーツをしている子供の多くは、緊張してしまう自分を恐れています。

それは、緊張やプレッシャーを感じることで、実力が十分に発揮できないと大人に言い聞かせられてきたからです。

しかし、適度な緊張感は集中力を高め、競技パフォーマンスを向上させてくれるため、緊張を否定的に考える必要はありません。

ここで本当に懸念したいことは「緊張している自分ではダメだ」と感じる自己否定感なのです。

たとえば子供達に「ここにある英単語を覚えて」と指示を出せば、ほとんどの子供がノートに英単語を書くなどして覚えようとするでしょう。

これは「英単語を覚える」という課題に対して、クリアするための方法が分かっているので行動へと繋げることができるのです。

ところが「緊張しないで」と言われたらどうでしょう。何をどうしたらよいのか分からず緊張する自分はダメだ!」という思考だけが残ってしまいます。

緊張は意図的に起こすものではなく、自分の意思に反して起こってしまうものです。自分の中で起こってしまった感情に反発して戦っても決していい方向に向かうことはありません。

それどころか、緊張している自分を否定的に考え、メンタルを不安定なものにさせてしまうため、「緊張」のワードを使った言葉かけをすることは好ましくありません。

過度な緊張を感じた時は

バスケットボール

緊張感は集中力を高め、競技パフォーマンスの向上に繋がるとお伝えしましたが、その緊張感が高まりすぎて耐えきれなくなれば、プレッシャーや不安、恐怖感からパフォーマンスの低下を招いてしまいます。

その時に大切なことは、「緊張してはいけない」と言い聞かせるのではなく、緊張しているという感情を頭でしっかり子供に認識させることです。

起こってしまった現実と無理に立ち向かおうとすれば、子供達にとって大きなストレスとなってしまいます。

「緊張することは悪いことじゃなく、それは当然のこと。やるべきことをやったら大丈夫。勝てる見込みは十分にあるよ。」 と実際の行動へと導いてあげることが大切です。

緊張と向き合う方法

これは私がメンタルトレーナーとして携わっている男子バスケットボール部に所属する選手と私の会話です。

葉月「明日はいよいよ新人戦だけど、今の状態はどうよ?準備は万端?」

健太「いや、今から緊張しててヤバいです。今からこんなに緊張してたら明日はどうなるか…」

葉月「どうして?緊張なんて誰でもするし、緊張感のない試合なんてつまんないでしょ。楽しまなきゃ!」

健太「でも、緊張すると動きは悪くなるし、シュートが入らなくなるし…。とにかくヤバいですって」

葉月「よし、健太!とりあえずその“ヤバい発言”禁止ね!だって何にもヤバくないから(笑)」

健太「いや、ヤバいですって(^_^;)」

葉月「ヤバいのは健太の思い込みよ。緊張するとパフォーマンスが低下してシュートが入らなくなる、そんな自分はヤバいって思い込みね。健太は過去の経験からそう感じてるのかもしれないけど、それ違うからね。そうやってマイナスのイメージばかりしていると実際にそれが起こってしまうというか…そういうふうに行動しちゃうもんなのよ。だから緊張している自分はヤバいって発想はやめて、この際緊張している自分と向き合ってみてはどう?」

健太「向き合うってどうやって?いつも気持ちを落ち着かせようとするけど結局ダメなんですよ」

葉月「無理に気持ちを落ち着かせようとしても、簡単にはコントロールできないから、自律神経をコントロールして気持ちを整えてみようか。」

健太「自律神経ですか?」

葉月「そうよ。じゃあ…まずは深呼吸ね!鼻から思いっきり息を吸って!はい、じゃあ次はゆっくり口から吐いて…。これを何度か繰り返すの」

葉月「どう?少し落ち着いた?」

健太「すごい(笑)なんかドキドキが少し治りました!!」

人が緊張すると心拍数が上がり胸がドキドキします。スポーツをするうえで適度な緊張感は必要ですが、その緊張に耐えきれなくなってしまえば、自律神経のバランスが崩れ、呼吸は浅くなり心が乱れてしまいます。

心拍数は呼吸によって変化するため、呼吸を深くしてゆっくり吐くことで心拍数は下がってくれ、メンタルを整えるのに大きな効果が期待できるとされています。

今回話した健太ですが、翌日の試合では得意げになって試合で活躍してくれました。

否定形より肯定形の言葉かけを

バスケットボールの試合

親も指導者も「選手へかけてはいけない言葉の決まり」は否定形の言葉です。その中でも特に避けたいフレーズが「失敗するな」「負けてはならない」などの言葉です。

親や指導者が過去の負けや失敗を引きずって、「失敗するな」「負けてはならない」と否定の言葉を使うことで、選手の脳には「負けている自分」や「失敗している自分」を無意識にイメージさせてしまいます。

つまりそれは、ネガティブの種を周りの大人がわざわざ撒いてあげているということなのです。

ネガティブなイメージや思考は選手のパフォーマンスを最大限に低下させてしまいますので、否定形の言葉は絶対にNGです。

例えば、「練習をサボるな」ではなく「練習は真剣に取り組もう」、「失敗するな」ではなく「成功させよう」の方が、子供達を前に進ませてあげることができますし、とても意図が伝わりやすいと思います。

特に相手はまだ子供ですので、大人の言葉を素直に受け止めるため、その影響は大人以上なのです。

親の気持ちを満たす言葉かけは不要

野球の試合

試合前の言葉かけは肯定形であることが大切だということを伝えしましたが、残念なことに「これを言えば絶対に大丈夫!」という絶対的な答えはありません。

つまり、その子がその場で何を言われたらどう感じるのかは、その時の子供の立場に立って考えるしかないということです。

その時に大切なことは、「親として子供に何かを言ってあげたい」などのように親の気持ちを満足させるのではなく、お子さんにとっては何が最善なのかを考えると、おのずと答えが出てくるのではないでしょうか。

それはもしかしたら、今は声を掛けずに見守ることが最善な方法かもしれませんし、試合とは全く関係ない話をしてあげることかもしれません。

まずは「お子さんの精神状態がどういった状態なのか」ということから考えてあげましょう。

最後に

今回は 「試合前の選手にかける言葉「緊張するな・失敗するな」はNGワード」についてお伝えしましたがいかがでしたでしょうか。

ひと昔前のやり方では「気合で乗り切れ」そんな感じが主流でしたが、正直言って現在ではそんなの通用しません。

体を鍛えるのと同様、プロを目指す選手はメンタル強化も意識して行っていますので、そんな選手に挑むには、やはり心を整える方法を知っておくことが必要です。

心を整える方法を知っている子は、ここぞという場面で大きな力を発揮することができますし、そのことで更なる自信をつけてどんどん成長することができるのだと思います。

2015年12月11日ペアレーチング

Posted by 葉月 愛