試合で実力を発揮する方法|ジュニア世代のメンタルトレーニング

サッカーをする少年

こんにちは、メンタルトレーナーの葉月です。

スポーツ少年団やクラブチーム、学校の部活動などでスポーツをしていれば、子供達は年間を通してたくさんの試合を経験すると思います。

もちろん、その中で勝ったり負けたりを繰り返して成長していくわけですが、スポーツの楽しいところは、競技能力の高い選手が必ず勝つかといえばそうでないところです。

「どれだけ試合で十分な実力が発揮できるか」「選手が日頃からメンタルを整えられる環境にあるか」ということは、勝敗に大きな影響を与えますし、海外のキッズアスリートやプロのスポーツ選手がメンタルトレーニングを重要視するのはそのためです。

ただし、メンタルトレーニングとは教科書通りにすれば最強のメンタルが手に入るかと聞かれればそんな単純なものではないし、特にジュニア世代のメンタルトレーニングは、周りの大人達が基本的な「思考」の意味を理解しておかなければ逆効果になるケースがあります。

そこで今回は、ジュニア世代に向けた正しいメンタルトレーニングの行い方についてお伝えしたいと思います。

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メンタルトレーニングの目的とは?

野球の試合をする少年

いわゆる「本番に強い」と言われる選手は、見事に勝利を手にすることができます。

例えば、A君は80%の力を持っていたとします。しかし本番では50%の力しか発揮できませんでした。それに対してB君は70%の力しか持っていないけれど、本番では65%の力を発揮することができました。

その結果、B君が勝利を手に入れることができるということになります。

スポーツでもメンタル面が重要視されるのはこのようなことが多く起こっているからです。

毎日の練習で身につけた技術や体力を本番で発揮させるために、メンタル面を強化させ、日々の練習の質を上げ、本番でも十分な実力を発揮させることがメンタルトレーニングを行う最大の目的だと言えます。

試合中にメンタルが乱れる「きっかけ」とは

野球の試合前

子供達が試合をする中でメンタルが乱れるきっかけは、私たち大人が想像する以上に転がっています。

  • 指導者からの叱咤
  • 応援席から聞こえてくる声
  • 試合中のミス
  • 得点やタイム
  • 自チームと相手チームの状況

このようなことがきっかけとなって、試合をする子供達の不安や恐怖心を掻き立て、平常心を見失ってしまった時に「慌てふためき、判断力を失い、心が乱れ、焦りがでる」などのような状態に陥ってしまいます。

また「試合前にメンタルと体の調子を整えられているか」という点も、本番で実力を発揮するためには大切なことです。

特に引退前の試合となれば、当然のことながら選手だけでなく指導者もピリピリしていたり、不安がよぎって落ち着かない状態へ陥ってしまうことがあります。

いくら「もうやり残したことはない。後は本番で力を発揮するだけだ」と自分達へ言い聞かせても、このまま終わってしまうんじゃないかという不安や、もしかしたら良い結果が出せるかもしれないという期待で「心の準備が整っていない」ことは意外と厄介だったりします。

では次に、実際にあった話をもとにメンタルの整え方についてお話ししたいと思います。

本番前の不安を解消してメンタルを整える

バスケットボールの試合

私がメンタルトレーナーとして携わっている男子バスケットボール部の選手に、大切な試合前になると体調を崩したり、試合時のロングシュートが入らなくなる選手がいました。

彼はシュートフォームがとてもキレイで、練習中はもちろんのこと、練習試合ではたくさんのロングシュートを決め、彼の調子が良い時はチーム全体の士気が上がるのが分かります。

しかし、彼の弱点は公式戦になると極度の緊張から体調を崩しやすくなるという点でした。

私は彼に公式戦前にはどのようなことを考えているか聞いてみました。すると彼は「またシュートが入らなかったらどうしよう。せっかく翔がボールを運んでくれても、俺が外したら申し訳ないし…って考えて緊張しちゃいます。」と答えてくれました。

「翔は慎之介がロングシュートを外したからって責めたりする?」

「いや、しません・・・」

「翔は慎之介を信頼していて一緒に戦いたいと思っているから、たとえ慎之介がシュートを外しても、翔はまた黙々とボールを運んで慎之介にパスを出してるんだよね。それにさ、翔だけでなくってみんなも、ただいつも通りにプレイができればって思っているんだと思うの。慎之介もそうじゃない?」

「もちろんです!公式戦でもいつも通りにプレイができれば…っていつも思います。」

「そのためにはさ、まず起きてもいないことに対して不安を抱いてしまう自分をどっかへやってしまおうよ!そして緊張は決して悪いことではないからそこはマイナスに考える必要はないからね。実は緊張は集中力を高めてくれるのよ。知ってた?」

「えっ?そうなんですか?緊張すると動きが悪くなる気がして…」

「それは、緊張に対して否定的な考えを持っていることに問題があるわね。つまり、慎之介の動きを悪くしてしまっているのは、緊張そのものではなくって、緊張してしまう自分はダメだという思い込みね。自分自身を否定してしまっているから心が耐えれなくなって必要以上に緊張を感じてしまうんだと思うよ。」

「なろほど、そんな風に考えたことなかったです。」

「試合前に大切なことは緊張を上手に受け止めて整えることよ。そのためには試合前の準備が大切なの。これから少しずつ教えていくから、一緒にやって行こう。」

「はい!頑張ります。」

まず彼にはイメージトレーニングを習慣つけてもらうようにしました。公式戦でいつも試合会場になる体育館へ入るところから始まり、ポジティブな試合の流れを毎晩寝る前にイメージしてもらいました。

マイナスなイメージは実際の試合でもマイナスに作用しますし、プラスなイメージは実際の試合でもプラスに作用してくれます。

慎之介も初めはどこか半信半疑のところがありましたが、何度もイメージトレーニングを重ねていくうちにコツを掴めたようで、私の元へ「試合前は、今までにないくらいのワクワク感を感じるようになりました」と笑顔で経過報告をしてくれました。

試合で力を発揮するために効果的な6つのイメージトレーニング
トップアスリートと呼ばれる選手の多くは、試合前になると成功のイメージを脳でつくっています。専門分野の研究からも、試合前にイメージトレーニングをした方が実際の成功率が上がるという報告があります。

失敗した時のメンタルの整え方

バスケットゴール

試合中に起きたミスを引きずることは、何一つとしてメリットを生み出しません。それどころか、失敗に失敗を重ね、メンタルを不安定なものにしてしまいます。

試合中の失敗に対する悔やしみや反省は、試合が終わってからでいいのです。 試合が終わるまでは、起きてしまった失敗は一度リセットして、再び試合と向き合うことが大切です。

慎之介は気持ちが表情に現れやすく、パフォーマンスが不調な時は「相手チームに対するサービスなのか?」というくらい、暗い顔をしてチームの士気を下げてしまいます。

そこでムードメーカーの歩夢が盛り上げようと頑張るのですが、センターの大地が慎之介の態度に腹を立てて試合にならない時もありました。

そこで私は慎之介にふたつ目のメンタルトレーニング術を教えました。それは皆さんもご存知の「ルーティン」です。

たとえば・・・

  • バッシュの紐を結び直す
  • バスパンの紐を結び直す
  • 深呼吸をする
  • 仲間とハイタッチをする

などのように、自分の中で「これをすればリスタート」を決めて、実際の行動に移したら気持ちを切り替えるように、と伝えました。

すると慎之介はその日の試合から、失敗をした時やプレイが上手くいかない時は「屈伸をしてリセット」をするようにします!と言って、そのうち気持ちを上手に切り替えられるようなりました。

この方法は、自分が失敗した時だけでなく、審判のジャッチに納得がいかない時や、相手チームの選手がフェアプレーをしないなどが原因でメンタルが乱されそうな時も有効ですので、下記の記事を参考にぜひトライしてみましょう。

【必見】子供達のやる気と集中力を高める「ルーティン」を伝授!
子供達がせっかくやる気を出しても、いつの間にか曖昧になってしまうことはとても残念で勿体ないことです。 そこで今回は 「子供達のやる気と集中力を高めるのに効果的なルーティン」についてお伝えしたいと思います。

メンタルを整えるための注意点

では最後に「試合中のメンタルを整えるうえで気をつけたい3つの注意点」についてお伝えしたいと思います。

負ける前提で戦わない

グランド

自分たちよりも格上のチームに勝つことは難しいかもしれませんが、100%負けが確定しているわけではありません。

少しの可能性を信じてどこまで頑張れるか、その気持ちがあるかないかでは、勝敗だけでなく今後の自分たちのチーム力にも大きく影響すると言っていいでしょう。

それでも心が折れそうだという時は、最終的な目標が曇りかけている証拠です。

選手である子供達も現場で指導している指導者も、この場を勝ち抜くことだけが目標ではないはずです。最終的に勝利を手に入れるために、負けの試合からでも、それぞれの課題を見つけれるような試合をすることが大切です。

自分の発言にのまれないようにする

バスケットボールの試合

負けた時にかっこ悪くありたくないと考え、試合をする前から「あんな強いチームに勝てるわけがないよ」「うちの実力じゃ無理だろうな」などと、諦めの発言をする選手がいます。

心のどこかでは、せっかく「勝ちたい」という思いあっても、自分自身でその思いを抑え込んでしまっているのです。

確かに明らかな格差があるチームに「本気で挑もうとするなんて」と、馬鹿にする人もいるかもしれませんが、そんなことがなんですか?

そんなくだらないプライドと引き換えに、成長や強さを失うことを考えれば大したことではありません。

ただの言葉だと思うかもしれませんが、気がつかないうちにその発言にのまれると、思った以上にパフォーマンスは低下し、能力のある相手はさらに強気になり、どんどん強くなることができ、さらに力の差をつけられてしまうのです。

努力こそ力なり

1に「挑戦」
2に「失敗」
3、4は「努力」で
5に「成功」

誰にでも言えることは「努力は無限」だということ。もしも子供達が「いくら努力しても全ての人に結果が出るわけでない」という考えを持っているのなら、まずはその思考から変えさせましょう。

努力が結果に出ないのは、まだ努力が足りていないだけなのです。もちろん自分の持つ体格や能力などから、できることに限界を感じる時もあるし、辛いと感じる時もあると思います。

しかし、子供達がそこに不満を感じているのなら、それを上回る強みを発見すればいいだけ。不満を抱いていても強くはなれないし、肝心な場面で心が折れてしまうのは、自分を信じれる強さが足りていない証拠です。

失敗と挫折、そして奮起。その繰り返して子供達は「ねばれる自分」をつくり出していくのです。ただ立ち止まっているだけでは前に進むことはできないのです。

まとめ

小学生の頃は、能力面で未熟な部分はあっても、とにかくがむしゃらで一生懸命です。

それが中学生になれば、スマートでありたい、カッコよくありたい、無様な姿は見られたくないとの思いから、「だるい」とか「めんどくさい」とか言った言葉をファッション感覚で使う子が多くいます。

そんな大きな意味もなさそうな言葉に自分のモチベーションやパフォーマンスを邪魔されては実にもったいない話です。

それでは、強いチームはどんどん強くなり、弱いチームはどんどん弱くなってしまう、負の無限ループに陥ってしまいます。

どんな対戦相手でも、消化試合だけはしないよう、全力で戦うことが大切なのです。