こんにちは、メンタルトレーナーの葉月です。
スポーツ少年団では現在も指導者による「暴言・暴力問題」の根絶が実現化されておらず、指導者の振る舞いが原因となって、子供達が「スポーツは楽しいもの」ではなく「スポーツは耐えるもの」「スポーツは辛いもの」「スポーツは厳しいもの」という認識のもとでスポーツ指導が行われているケースが存在します。
突然ですが、皆さんは「陶器が出来上がるまでの過程」をご存知でしょうか?
まずは「土練り」から始まり、何度も何度も人の手によって練られます。そして形が整えられられた後は1週間かけてしっかり乾燥され、その後800度から1250度の温度に耐え頑丈な陶器が仕上がります。
陶器は一見弱そうですが、落としても簡単には割れません。しかしハンマーなどで人の手によって外から衝撃を与えられれば簡単に割れてしまいます。
子供達のメンタルもこれと同じことが言えます。
子供達は日々の練習やトレーニングの中で体だけでなく、心も強くなっていきます。時には失敗したり、心が挫けそうになっても、周りの人の支えと自分の力で何とか前へ進もうと頑張ります。
その積み重ねが子供達の自信となって「落としても割れない陶器」のような強い心ができるのですが、指導者の振る舞いで簡単に割れてしまうことがあるということを、スポーツ指導に携わる大人たちはしっかり理解しなくてはならないのではないでしょうか。
今回はあるミニバス指導者が起こした暴言・暴力問題をもとに、「スポーツ指導のあり方」と日本バスケット連盟が発信した「ゲーム中のコーチによるプレーヤーの暴言・暴力的行為に対する対応方針(ガイドライン)」について考えていきたいと思いますので、最後までお付き合いいただければと思います。
ミニバス指導者による暴言・暴力問題
これは実際に行われたミニバスケットボールの試合で起きたお話です。
先週の土曜日と日曜日は、息子が所属しているチームの試合があったため、私は応援に行ってきました。
1日目は2勝することができたため、1位パートで2日目を迎えることができました。2日目も1試合目から子供達は本当に頑張り、夏休みでの練習の成果を思う存分に発揮できたと思います。
そして2試合目の準決勝戦で信じられない出来事が起きてしまいました。
試合開始から1Q終了時での得点は『8対10』。2点差で負けてましたが、試合の流れはまずまずな感じでした。
そして2Q終了時点では『15対26』。少し点差を開かれてしまいました。
しかし、3Q目ではセンターの子が今までにないくらいの頑張りを見せてくれ、『34対35』。1点差まで詰め寄ることができました。
そして4Q目からは、息子の得意なオールコートマンツーでのディフェンス。
私は息子の真剣な顔に鳥肌が立ちました。コーチに不満を抱き「最近、試合が楽しくない」と言っていた息子を心配していましたが、やはり息子が一生懸命になっている姿というのはいつ見ても嬉しいものです。
しかし、試合が残り2分になったあたりから、センターの子はスタミナ不足からか集中力がなくなり、パスを出してもキャッチできず、ディフェンスも散漫。何度もその子の名前を大声で呼んで怒鳴りだすコーチ。
試合時間残り2分『45対40』の5点差で勝っていましたが、この調子ではいつ巻き返されるか…
試合時間残り15秒『47対46 』1点差まで詰め寄られました。
そして、センターの子がゴール下でキャッチミスした直後にコーチがタイムアウトをとりました。あれはタイムアウトをとって20秒ほど経った頃でしょうか…?
「ピッピーーーーー!!!!!」
何!?何の笛!?
何ともお恥ずかしいことに、タイムアウト中にヘッドコーチがセンターの子を激しく突き飛ばし、審判にテクニカルファールをとられてしまいました。
初めて見る光景に子どもたちも保護者も目がテン。
そして相手チームに渡された2本のフリースロー。2本とも決められてしまいました。
試合時間残り15秒、『47対48』。しかもテクニカルファールのため、相手ボールからのスタート。
相手チームには、ドリブルとパスで時間を稼がれ、うちの選手はボールに触れることもできないまま試合終了。
挨拶終了後、泣き崩れる息子達。
テクニカルファールをとられたコーチは子供達に「負けたのはあの2本だけのせいじゃない。お前たちの弱さがこの結果を招いた」と伝えて帰宅して行きました。
そして翌日、練習を見に行くと今週末に保護者が開かれると聞かされました。そこでコーチが何を話されるのかは分かりませんが、今はとても許せない気持ちで一杯です。
スポーツ指導をする者の心得とは
メンタルトレーニングに関する知識を、書籍やネット、講習会などから学ぶことは簡単です。
しかしそれを実践できるかどうかは、知識や理論だけでは不十分で、まずが自分自身についてしっかり考える必要があるのではないかと思います。
いくら子供の「意欲」「やる気」を引き出す方法を学んでも、指導者の心理状態が不安定だったり、イライラしていると、判断力・決断力・予測力が低下し、選手へ本当に伝えたいことが伝わらないし、子供達は指導者の心理状態をそのまま返したようなメンタルの乱れを起こしてしまいます。
逆にコーチの心理状態が安定していたり、いつも前向きな姿勢で練習へ取り組んでいる場合は、子供達もメンタルが安定し、練習へも前向きに取り組むことができるようになります。
このように指導者の振る舞いは子供のメンタル面に大きく影響しますので、子供のメンタル強化が上手くいかないと考えている指導者の方は、まずご自身の「振る舞い」についてもう一度考えてみる必要があるのかもしれません。
もちろんそれは、スポーツ指導をするコーチだけでなく、子供達をサポートする保護者の方にも同じことが言えます。
ゲーム中のコーチによるプレーヤーの暴言・暴力的行為に対する対応方針(ガイドライン)
先日、日本バスケット連盟(JBA)より「ゲーム中のコーチによるプレーヤーの暴言・暴力的行為に対する対応方針(ガイドライン)」について以下の内容が公表されました。
JBAでは、インテグリティの精神(誠実さ、真摯さ、高潔さ)に則り、「クリーンバスケット、クリーン・ザ・ゲーム」を推進していきたいと考えています。これは、ゲームに関わるプレーヤー、コーチ、レフェリー全ての協力でゲームの価値を高めようとする取り組みであり、ゲームを尊重する精神「リスペクト・フォーザ・ゲーム」にそったものであります。
バスケットボールのゲームは、ゲームに関わる関係者のみならず、観客の存在も欠かすことができません。
プレーヤー、コーチ、レフェリー、観客も含めてゲームの価値を高める努力をすることが必要です。
そして、そのためにはコーチの振る舞い(行動や行為)も非常に重要になってきます。
コーチの振る舞いは、ゲームに関わる関係者(プレーヤー、レフェリー)に直接影響があるだけでなく、ゲームを観ている観客の方々にとっても大きな影響を与えます。
そこで、コーチの振る舞いについてある一定の基準を設けてテクニカルファウルの対象とし、ゲームの価値を下げない取り組みを推進することとしました。
テクニカルファウルの対象となる振る舞い(行動・行為)
1.コーチのプレーヤーに対する暴言
- 人格、人権、存在を否定する言葉
- 自尊心を傷つける、能力を否定する言葉
- 身体的特徴をけなす言葉
- 恐怖感を与える言葉
2.コーチの暴力的振る舞い(行為・行動)
- 殴る・蹴るなどを連想させる行為
- プレーヤーと近接(顔の目の前、腕一本分より近い距離)して高圧的威圧的に指導する行為
- 「おら!」「こら!」と大声でプレーヤーを高圧的威圧的に指導する行為
- 継続的、かつ、度を超えた大声でプレーヤーを指導する行為、いわゆる怒鳴りつける行為
- 物に当たる、投げる、床を蹴るなどの行為
3.第三者が不快と感じる振る舞い(行動・行為)
- 不潔な服装、裸足やスリッパでの指導
日本バスケット連盟(JCB)ガイドライン参考資料4より
バスケットボールの試合が行われる体育館では、まだまだこのような言葉が当然のように使われていますし、このことを疑問に思わなかったり、よしとする保護者の方がいることも事実の一つとして考えていく必要があるのではないかと思います。
暴言を暴言と感じない、暴力を愛のムチだと感じるのは、決して信頼なんかではなく、一種の「洗脳」ではないだろうかと考えます。
選手には思考を変えて夢に希望を持ってほしい
今までにたくさんのクラブチームを見てきましたが、多かれ少なかれ問題を抱えているチームは少なくありません。
しかし、このような問題が起きた場合、選手にとっては、指導者であるコーチや監督が無能に見える事があるかもしれませんし、「こんなコーチの下で練習したって成長するわけがない」と思うことがあるかもしれません。
でも、どうかお願いします。選手である皆さんは、その前に「自分自身でやるべき事」が出来ているか、自分は最高の自主性を持ち、夢に希望を持って最高の努力をしているのかをもう一度考えてみてください。
誰かに不満を抱くことはいつでもできます。自分を取り巻く状況に振り回されて、あなたの夢が遠ざかったりだけはしないよう心から願います。