コーチに対するテクニカルファウルで指導者意識を高められるのか?

2019年3月26日スポ少・部活

バスケットボール

メンタルトレーナーの葉月です。

先日、日本バスケット連盟(JBA)より「ゲーム中のコーチによるプレーヤーの暴言・暴力的行為に対する対応方針(ガイドライン)」が公表され、試合中の反則を厳格に適用するなどし、暴言・暴力根絶に向けた取り組みが行われました。

私が初めてこの内容を見た時は「やっとJBAも本格的に動いてくれたか…。」と言うのが正直な思いで、これでスポーツの現場がより良いものになればいいなと心からそう思いました。

しかし、ある方からの言葉にすごく考えさせられることがありましたので、今回はそのことについてお話ししたいと思います。

人は行動をするだけで何かを解決した気になってしまうことがありますが、JBAの掲げる「ゲーム中のコーチによるプレーヤーの暴言・暴力的行為に対する対応方針(ガイドライン)」は、スタート地点に過ぎません。

このような「掲げ」で全てが解決するほど単純な問題ではないし、実際の現場を良くするには、もっと根本的な解決が必要だと感じました。

それと同時に「やはり子供の犠牲に成り立ってしまうのか…」と言うのが私の正直な印象でした。

今回は「ゲーム中のコーチによるプレーヤーの暴言・暴力的行為に対する対応方針(ガイドライン)」は本当に子供達の未来を守れるのか、そして指導者の暴言や暴力を撲滅することができるのか、という点について考えていきたいと思います。

ゲーム中のコーチによるプレーヤーの暴言・暴力的行為に対する対応方針(ガイドライン)

JBAが公表した「ゲーム中のコーチによるプレーヤーの暴言・暴力的行為に対する対応方針」は以下のような内容になります。(一部抜粋あり)

JBAでは、インテグリティの精神(誠実さ、真摯さ、高潔さ)に則り、「クリーンバスケット、クリーン・ザ・ゲーム」を推進していきたいと考えています。これは、ゲームに関わるプレーヤー、コーチ、レフェリー全ての協力でゲームの価値を高めようとする取り組みであり、ゲームを尊重する精神「リスペクト・フォーザ・ゲーム」にそったものであります。

バスケットボールのゲームは、ゲームに関わる関係者のみならず、観客の存在も欠かすことができません。

プレーヤー、コーチ、レフェリー、観客も含めてゲームの価値を高める努力をすることが必要です。

そして、そのためにはコーチの振る舞い(行動や行為)も非常に重要になってきます。

コーチの振る舞いは、ゲームに関わる関係者(プレーヤー、レフェリー)に直接影響があるだけでなく、ゲームを観ている観客の方々にとっても大きな影響を与えます。

そこで、コーチの振る舞いについてある一定の基準を設けてテクニカルファウルの対象とし、ゲームの価値を下げない取り組みを推進することとしました。

テクニカルファウルの対象となる振る舞い(行動・行為)

1.コーチのプレーヤーに対する暴言

  1. 人格、人権、存在を否定する言葉
  2. 自尊心を傷つける、能力を否定する言葉
  3. 身体的特徴をけなす言葉
  4. 恐怖感を与える言葉

2.コーチの暴力的振る舞い(行為・行動)

  1. 殴る・蹴るなどを連想させる行為
  2. プレーヤーと近接(顔の目の前、腕一本分より近い距離)して高圧的威圧的に指導する行為
  3. 「おら!」「こら!」と大声でプレーヤーを高圧的威圧的に指導する行為
  4. 継続的、かつ、度を超えた大声でプレーヤーを指導する行為、いわゆる怒鳴りつける行為
  5. 物に当たる、投げる、床を蹴るなどの行為

3.第三者が不快と感じる振る舞い(行動・行為)

  1. 不潔な服装、裸足やスリッパでの指導

日本バスケット連盟(JCB)ガイドライン参考資料4より

バスケット指導での暴言・暴力問題の実態

2012年に大阪市立桜宮高の男子バスケットボール部員が指導者による体罰が原因で自ら命を絶つという事件が起きましたしが、その後も状況が大きく改善されることはなく、2014年から日本スポーツ協会に寄せられた暴言・暴力に関する相談は300件以上になり、その中でもバスケット関連の事件が最も多く報告されています。

バスケットボールはサッカーのようにコートが広くありませんし、また屋外であることも体罰問題が起きやすい環境と言われていますが、そのような環境を言い訳に「仕方のない振る舞い」だと黙認することは間違っていますし、インテグリティ委員会の宇田川委員長がおっしゃるように「試合はバスケットの一部に過ぎないが、まずは目に見えるところからアクションを起こす。」ということも一つの対応策なのかとも思います。

しかし今回の取り組みは、指導者が自発的に暴言・暴力をやめようと思わせるには不十分な内容ですし、これからもスポーツ指導のあり方を考えて行かなければ子供達の未来を守ることはできないと思います。

2019年3月26日スポ少・部活

Posted by 葉月 愛