スポーツをする子供の挫折|大きく影響する親のあり方とは

野球の試合を見る親

こんにちは、メンタルトレーナーの葉月です。

「スポーツを頑張る子供の挫折」それは選手である子供にとっても、近くで応援しているお父さんやお母さんにとっても辛いことだと思います。

子供達が生まれてから大人になっていく過程の中で、「山もあれば谷もある」ということを頭では理解をしていても、実際に子供が悩んでる姿や、苦しんでいる姿を見れば、どうにかしてあげたいと思うのが親心でしょう。

もちろん挫折から立ち上がるのは子供自身ですし、自分のするべき努力を続けるのも子供自身ですが、それらの原動力となるのは周りにいる大人達の「声かけ」にあります。

もしも「子供の挫折」について悩んでいるのでしたら、これから子供達が再び笑顔でグランドやコートに立てるように、子供達が再びスポーツと前向きに向き合えるように「子供の挫折と親のあり方」についてお話ししたいと思いますので、最後までお付き合いいただければと思います。

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挫折とは?

野球をする少年

そもそも挫折とはどのような状態のことを指すのでしょうか?

挫折を簡単に説明すると、目的や目標を持って取り組んでいたことが途中でダメになったり、そのことが原因で意欲や気力を失くしてしまうことを言います。

たとえば「自分には才能がないのではないか」と絶望感を抱いた時や、「この夢は叶わないのではないか」と希望を失った時、「これ以上頑張ることはもう無理だ」と心が折れた時などに挫折を味わうことになります。

つまり「何も目標を持たない」「難しいことには挑戦しない」を徹底している子供には、挫折を味わうことはないということですし、子供が挫折を感じて前に進めないのは決して悪いことではありません。

子供の挫折と親のあり方

雨に濡れた野球ボール

挫折を感じている時期というのは、自分の能力に対して否定的になったり、「これ以上頑張ってもどうせダメだ!」などと、諦めて自分の能力に限界を決めつけてしまうことがあります。

挫折を乗り越える子供がいる一方で、挫折に耐え切れず心が折れてしまう子供もいる。では、その子供達の差は一体何なのでしょうか・・・。

子供の心が挫け折れるきっかけには「コーチの采配」「想定外の敗北」「パフォーマンスの伸び悩み」など様々なケースがあげられますが、根本的な原因は「自己肯定感」に問題があると考えられます。

自己肯定感が高い子は問題が起きても「自分なら大丈夫」と自分の可能性を信じる強さがあるのに対し、自己肯定感の低い子は「やっぱり自分には無理なのかもしれない」と自分の可能性を最大限に低くしてしまいます。

自己肯定感は、周りから自分を認めてもらい、肯定的な言葉をかけてもらうことで育まれていくものです。そのため、子供達が挫折を挫折のままで終わらせない強さを身につけるには、 周りに存在する大人の関りが大きく影響するということです。

私がメンタルトレーナーとして携わっているミニバスのチームでも、選手の自己肯定感の低さからこのような問題が起こりました。

自己肯定感の低下が招く問題点

バスケットボールの試合

私がメンタルトレーナーとして携わっているミニバスケットボールチームに「ヒカル」というフォワードポジションの選手がいました。

ヒカルは背が高く体格に恵まれており、5年生の春に入部した時はコーチからとても期待を寄せられる選手でした。

バスケのセンスも良く、指導されたことに対するのみ込みも早かったため、入部して数ヶ月で試合にも出るようになりました。

しかし、ヒカルはいつも自信なさげで、コーチに「よし!いいぞ、ヒカル!」と褒められてもどこか引きつった笑顔を見せるような子でした。

そして試合中は「本当にこれであっているのか…」とオロオロする場面もよく見られるし、コーチに叱られると思考がストップしてしまう場面も多々ありました。

そしてある日の練習試合…。

当時はまだゾーンディフェンスが許されていた時で、ヒカルは二人の選手にマークされて思うような動きができず、パスをキャッチできなかったり、相手からボールを取られたりとシュートにいけない状態が何度も繰り返されました。

しかしこれもヒカルにとってはいい経験だと言ってコーチはヒカルを下げることなく最後まで試合に出しましたし、ヒカルもコーチに応えるように最後まで彼なりに頑張っていました。

そして試合が終わって私が目にしたものは「ヒカルの涙」でした。

私はその涙を見て彼の頭をポンポンとして「本当によく頑張った!最後まで諦めなっかたヒカルはすごいよ!今日は美味しいものをたくさん食べて、また明日から一緒に頑張ろう!」と声をかけたのですが、そこへヒカルのお母さんがやってきて、彼の頭を思いっきり叩いたのです。

そしてお母さんはすごい剣幕で「そんなにやる気がないんだったら辞めなさい!ヒカルは運動神経が鈍いんだから人一倍頑張らないとダメなのよ!見てるこっちが恥ずかしわ!今日は配車に乗っちゃダメよ!ヒカルだけ走って帰りなさい!」とヒカルへ怒鳴りつけました。

その瞬間にヒカルの体は縮こまり、さらに涙が溢れてきました。

私はその時「ヒカルの自信なさげな表情やあの行動はここからきているのか…」と原因が分かってスッキリしたのと、とても気が重くなったのを覚えています。

このような言葉かけを叱咤激励としているのであればそれは違うし、このような言葉かけで子供のやる気スイッチが入るかと聞かれれば、間違いなく入りません。

後日お母さんとお話をしたのですが、その日のお母さんの表情は先日の試合の時とは違ってとても穏やかで、色々とヒカルの話しをしてくれました。

お母さんはヒカルにとても愛情深いし、ヒカルを熱心に応援しているということが分かりました。もちろんヒカルが憎いわけでも可愛くないわけでもない、ただヒカルに対する期待や希望が間違った方向で発散されてしまったのだと思います。

お母さんには、ヒカルの自己肯定感についてと言葉の影響力についてお話ししました。

自己肯定感はすぐにその場で育つものではありませんが、自己肯定感を育てるのに遅いということはありません。

現在ヒカルは高校生になりましたが、小学生の時とはまるで別人でとても自信に満ち溢れた素晴らしいバスケットボール選手としてコートに立っています。

これもお母さんの理解と愛情が今のヒカルを育てたのだと思います。

子供がチャレンジ精神をなくす原因

芝生に座る赤ん坊

人が赤ん坊として生まれてから二足歩行ができるようになるまでの約1年間を考えてみてください。

初めは寝返りさえもできなかった赤ん坊が、ハイハイができるようになり、つかまり立ちをし、ヨロヨロしながらも歩き出します。

1人で立派に歩けるまでには何度転び何度泣いたことでしょうか。それでも「俺なんてどうせ歩けるようになんてならないさ」と歩こうとするのをやめたという話は聞いたことありません。

赤ん坊には、過去や経験と呼べるものがまだないため「どうせ」という諦めの感情がありません。

しかし成長した子供達には過去があり、その中には忘れたくても忘れられない失敗や挫折の記憶があります。

その過去の記憶が「どうせ」と否定的な思いで自分の限界を決めてしまうのです。

しかし子供達が成長するうえで、失敗や挫折は決して悪いものではありません。ただ周りの大人たちが失敗を責めることで、子供達は「失敗は悪いこと」だと認識してしまうのです。

逆に失敗するまでにしてきた「挑戦」に対して評価してあげれば、子供達はこれからもチャレンジ精神をもって前へ進むことができるでしょう。

失敗・挑戦・成功」の定義

サッカーをする少年

人には誰でも自分を傷つけたくないという「自己防衛本能」があります。「成功はしたいが失敗はしたくない」それが私たち人間の正直な気持ちです。

子供達も大勢の前で失敗すればかっこ悪いと感じるし、周りからの評価を受けられないと不安になる。成功すれば大人達から褒められるし、逆に失敗すれば責められる。

ところがどんな天才と言われる人でも、失敗なくしての成長はありませんし、「成功する者は有能」で「失敗する者は無能」だという考えは完全に間違いです。

子供達は失敗をするから成長するし、その成長があるから成功するのです。そしてその時に得られた達成感が子供達を一回りも二回りも大きくさせてくれます。

周りからの評価を気にせず「失敗」と「成功」の定義を明確にできたら、子供達は「失敗を恐れず挑戦し続ける自分」に出会え、自分の持つ才能を上手に伸ばしていくことができるでしょう。

そのためには、まずは周りにいる大人たちがその定義を理解することが大切です。

頑張る過ぎる子にはこの言葉を

サッカーの試合

真面目な子や頑張っている子ほど「挫折」を感じることが多く、中には燃え尽き症候群になって好きでしていたスポーツを辞めざるを得ない状態になるケースもあります。

子供がそのような状態にならないためのサポートは一番近くで見ている親御さんでしかできないことです。

「サポート」と言えば少し荷が重く感じるかもしれませんが、お父さんやお母さんがしてあげるサポートはいたってシンプルです。

ただシンプルですが少し我慢がいるし、意外と難しかったりもしてできていない親御さんは少なくありません。

それは親が結果にこだわり過ぎないということです。

親や指導者が結果ばかりを評価すれば、おのずと子供達もそうなり、完璧主義な子供ほど苦しむことになります。

もちろんスポーツ選手として勝ちにこだわることも大切ですが、目の前の結果に振り回されてしまっては、最終目標へたどり着く前にメンタルがボロボロになってしまいます。

親の役割は目の前の勝利を一緒に喜ぶことではなく、子供が最終目標に辿り着けるよう一緒に寄り添ってあげることではないでしょうか。

スポーツをする子供が抱く不安や恐怖心の原因と親がしたい言葉かけ
スポーツは楽しいこともたくさんあるけれど、時に「挫折」「トラウマ」「スランプ」「イップス」に悩まされる選手も少なくありません。 今回は、あるお母さんからご相談いただいた内容をもとに「子供が持つ不安の原因と深層心理」について考えていきたいと思います。

子供の挫折と親の言葉かけ

スポーツ少年団や学校の部活動で挫折する一番多くの原因が、「レギュラーから外された」「選抜チームから外された」というものです。

ずっと第一線で活躍してきた選手であれば尚のこと悔しいし辛い経験だと思います。

特に男子が中学生になった時、体格にも差が出てきますし、小さかった選手が予想以上に大きくなったり、大きかった選手の成長が思ったより伸びなかったというケースも珍しくありませんし、中学になって突然能力を発揮する選手も少なくありません。

そのため、今まで感じたことのない劣等感や敗北感を感じて心が折れてしまう子供もいます。

そこで私がいつも保護者の方にお願いしていることは

  • 自分の子と他の選手と比べて批判しない
  • 結果に対して否定的な声かけをしない

この2点です。

これはどの選手にも例外なく、他人と比較して振り回させる選手は成長しません。しかし周りの大人から比較されれば、子供が気にするようになってしまうのは当然のことです。

保護者の方は常に「目の前の子供自身」を見て声をかけてあげるべきではないでしょうか。子供達はそこで「安心感」を得られることができれば、また前向きに進めるようになるはずです。

自己肯定感が高いのに挫折してしまう子は・・・

サッカーの練習

自己肯定感もチャレンジ精神も旺盛で、何に対しても行動的で前向きに取り組めるのに、最後までやり抜く力がなく、夢が夢のままで終わってしまう子も少なくありません。

自分で目標を掲げたり、スタートラインに立つ意欲や能力はあるのに、いざ走り出していいところまできても、辛い現実にぶつかると心が折れて諦めてしまうというケースはすごく残念なパターンです。

このパターンの主な原因は、スタート時点で抱く夢や目標に問題があるのではなく、それまでのプロセスに問題があることが考えられます。

ただ「プロになりたい」と漠然な夢だけで前へ進んでも、自分がその夢に対して近づいているという確信が持てなければ、モチベーションを保つことが難しくなってしまいます。

このパターンで挫折する子は、大きな目標を達成するための「さらに細かな目標」を立てることをオススメします。

下記の記事で「目標設定の方法」についてご説明していますので、参考にされるとよいかと思います。

正しい目標設定で子供を本気にさせる6つの法則|目標達成シート活用術
「目標がある選手」と「目標がない選手」とでは、やる気にも集中力にも大きな差が生まれるため子供達がスポーツをするうえで「目標を持つ」ということはとても大切なことです。 ただし、目標の立て方に問題があれば達成することは難しいし、子供達のモチベーションの低下につながるケースもあるため、大人が無理に目標を持たせることはオススメできません。

挫折を乗り越えた3人のトップアスリート達

バットと野球ボール

トップアスリートと呼ばれる選手たちは一見華やかに見えますが挫折を味わっていない選手は存在しません。

今回は「マイケルジョーダン」「本田圭佑」「桑田真澄」の3人のトップアスリートの挫折についてお話したいと思います。

マイケルジョーダンの挫折

マイケルジョーダン

画像引用元:http://tunadrama.com/

ジャンプの滞空時間の長さから、「エアー・ジョーダン」という愛称で愛され、バスケットボール界の神様と評されたマイケルジョーダンですが、彼も高校時代に「選抜チームから漏れる」という大きな挫折を味わっています。

マイケルの身長は当時180cm足らずで、ずば抜けて高身長というわけではなく、選抜で選ばれたのは、当時身長が196cmあった「リロイ・スミス」でした。

選抜チームから漏れたマイケルは、家に帰って一日中、泣いていたといいます。

しかし、マイケルはその時、この挫折をばねに「最高のプレイヤーになる」ことを決断しました。その決断がのちに「バスケットボール界の神様・マイケル」を生みだしたのです。

メンタル強化|負けず嫌いの子供がスポーツで強くなる4つの法則
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挫折を踏み台にした桑田真澄

桑田真澄

画像引用元:https://yoshilover.com/

ジャイアンツの練習グランドには、2軍選手が敬意を込めて「クワタロード」と称した1本の道がありました。

グランドの芝生の縁に沿って、ひと筋にきれいに芝が抜けているその道は、胸のケガのためにボールを握れなかった2年間、桑田さんが毎日黙々と走り続けたコースでした。

投手でありながらボールを握れない2年間はとても辛かったと思います。多くの人は、「絶望感」「恐怖感」「不安感」に襲われ投げ出したくなるのではないでしょうか。

それでもケガを克服し、再びマウンドに立った桑田さん。「自分の将来」を信じて自分の今やるべき努力を黙々こなしていった結果なのでしょう。

中学時代に味わった本田圭佑の挫折

本田圭佑

画像引用元:https://blogos.com/

イタリアの名門ACミランに日本人で初めて所属し、10番を背負うなど日本サッカー界にとって欠かせないプレーヤーとなった本田圭佑選手も中学時代に大きな挫折を味わっています。

当時の本田選手は強豪のガンバ大阪ジュニアユースに所属しており、一つ上のユースチームへのセレクションを受けることになりますが、これが不合格。

しかし、これをきっかけに「絶対にプロにならねばならない」と志をより強固なものにし、高校卒業時に名古屋グランパスエイトと契約します。

その後は2008年に海外へ渡り、ついには「セリエAの10番になる」という小学校の卒業文集に書いた夢を叶えました。

まとめ

今回は「スポーツをする子供の挫折|大きく影響する親のあり方とは」についてお伝えしましたがいかがでしたでしょうか。

挫折を辞書で調べると「目的を持って続けてきた仕事などが途中でだめになること」とありますが、挫折とはそれほど悪い経験ではありません。

むしろ長い人生において、 挫折ほど大切なことに気づかせてくれる機会はないのです。

ただ長い人生で一時の挫折とはいえ、挫折を味わっている本人にとっては辛い時期であることは確かでしょう。

「もう駄目だと」絶望的になったり、「やってられるか」と投げやりになったり、その辛さは本人にしか分かりません。

しかしそれをかっこ悪いだとか、惨めだとか感じる必要はありませんし、周りからの評価に振り回される必要もありません。

挫折とは、何かひとつの事に一生懸命に取り組んでいれば必ず誰もが経験するものなのです。

そのことを子供達へ伝えてあげることが、私達大人にできることではないでしょうか。