こんにちは、メンタルトレーナーの葉月です。
スポーツをする子供達が成長していく中で「何が大切か」あるいは「何を大切にしないといけないか」というのは、人それぞれに様々な考えがあると思います。
「勝つことの喜び」「諦めない強さを得る」「仲間との信頼関係」など、スポーツをする中で子供の成長にプラスになることはたくさんあります。
しかし「失敗」「敗北」「挫折」など、時として辛い経験をすることも少なくありません。
先日もあるお母さんから「子供達が勝てない試合をする意味はあるのか?」というご相談を受けました。
そこで今回は 「スポーツをする意義」について考えていきたいと思います。
実力差があるチームと試合をして得るものって? (和美さんよりご相談)
私の娘はスポーツ少年団でバスケットボールをしています。うちのチームの女子は市内でもドベ争いをするほどの弱小チームです。逆に男子は市内1位をキープしている強豪チーム。
男子は強いため、練習試合やカップ戦によく呼ばれ、女子はそのおまけで試合を組んでもらうのですが、なんせ相手はいつも強いチームばかりなため、100点ゲームだって珍しくありません。
私は疑問でならないんです。負けると分かっていて試合をする子供達は楽しいのかと。男子のおまけでついて行って、ボロボロにやられて帰ってきてモチベーションは低下しないのかと。
娘に「悔しくないの?どうしてもっと頑張らないの?」と聞いても「頑張ってるし」と言うだけで、何を考えているのか分かりません。
コーチは勝てない試合こそ意味があるというのですが、それって何だと思いますか?
勝つことが全てなのか?
まず最初に考えていきたいことは、子供達にとって最大の喜びや褒美は「勝利」なのかという点です。
「子供は大人のミニチュアではない」これは私達メンタルトレーナーが最初に認識するべき事実だし、しっかりこのとこを理解しなければ子供達を守ることはできません。
もちろん子供達は試合に勝てば嬉しいし、そこで得られる達成感や喜びが今後の自信となり、子供達を大きく成長させてくれるでしょう。
しかしながら「勝つことで全ての苦労や苦しみを忘れてしまう」「勝つことで前向きに取り組むことができる」というのは、大人たちの勝手な考え方ではないでしょうか。
もしも勝つことだけが喜びであり、褒美であれば、負けた子供達は喜びも褒美も全く得られずやる気を低下させスポーツをする意義を見失ってしまうでしょう。
負けた試合から学べること
結論からお伝えすると、コーチがおっしゃるように、勝てない試合にも意味があるし、学べることはたくさんあります。
ただし、それは子供の考え方や取り組み方次第だということが前提です。
負けることが当然になってしまうことは良くありませんし、最初から勝てるわけがないと諦めの姿勢で挑むことも良くありません。
もちろん力の差が明らかであれば、途中で心が折れそうになったり、集中力が続かなくなったり、もうやめたくなることもあるかもしれません。
しかし、大切なことは自分達よりも弱いチームに勝つことではなく、自分達よりも強いチームにどこまで挑戦できて、どこまで結果を出せたか、そして試合の中で自分の弱点や課題を見つけることです。
子供達のスポーツ人生は小学校で終わるわけではありません。
私が知っている選手では、弱小チームにいたからこそ自分の技術を伸ばすことができた子もいます。その選手の性格上、自分以外にも競技能力の高い選手がいたら彼の成長はここまでなかっただろうなと思います。
言葉をかける時の注意点
「悔しくないの?どうしてもっと頑張らないの?」とお子さんに声をかけたということですが、美和さんの中に「私だったらもっと悔しがるのに」「私だったらもっと一生懸命になるのに」「もっと頑張る娘を見たい」というような思いがあるのではないでしょうか?
大人は子供達の良いところを見つけてあげることが苦手で、すぐに欠点を見つけて改善しようと口うるさくなってしまうことがあります。
昔は私自身もそうだったので、美和さんのお気持ちは痛いほどよく分かるのですが、「自分がそうだったから子供もそうあるべき」「自分がそうだったから子供もきっとそうだろう」と自分の経験に基づく決めつけが、時に子供を窮屈にさせてしまうことがあります。
そしてよく考えてください。負けてばかりの試合でも美和さんのお子さんは真面目にスポーツへ取り組んでいるんですよね?周りのお友達が遊んでいる時も、体育館で練習をしているわけですよね?
私はそれだけでも十分立派だと思うのです。
親は練習をサボる子には「とにかくサボらずに行ってほしい」と願うし、真面目にやっている子には「もっと負けん気を出してほしい」と願うし、子供がやっと試合に出れるようになれば「結果を出してほしい」と願う…。
このように親の期待や願望はとどまることを知りません。
子供達はこのような親の気持ちに一生懸命応えようとするのですが、このようなことが長く続けば、いずれ子供はそんな親の期待や願望に疑問を抱く時が訪れるでしょう。
女子選手のやる気を低下させる言葉
女子選手は男子選手と比べて心理状態が少し複雑です。
男子は技術面で認められたいと思っていますが、女子選手は人間性について認めてもらいたいと思っています。
つまり女子選手はコーチや親に対して 「一人の人間として評価してほしい」と願っているのです。
そのため結果が出せないことに対して「どうしてもっと頑張らないの?」などのように言われると、「こんなに頑張っているのに、何にも分かってくれない!」と自分自身を否定されている気分になり女子選手のモチベーションは低下してしまいます。
そのため、試合で負けが続いても、親御さんは結果ばかりを気にしてはいけませんし、周りからそのようなプレッシャーは選手にとってあまりいい影響を与えません。
大人が子供へ伝えられること
コーチは「スポーツの技術や戦略を教える人」ではなく「スポーツをする楽しさを教える人」であってほしいと思いますし、親も「生きていくための知識や教養を教える人」ではなく「生きていく楽しさを教える人」であってほしいと思います。
もちろんメンタルトレーナーとして活動している私も「メンタルを強くする方法を教える人」ではなく「ワクワクすることの楽しさを教える人」でありたいと思って子供達と接しています。
子供達はそれぞれに「楽しさ」と見つけることができれば、努力も惜しまないし想像以上の力を発揮するものです。