こんにちは、メンタルトレーナーの葉月です。
スポ少(スポーツ少年団)は学校の部活動とは違って、親御さんの協力なしでは成り立たないため、親とコーチの関わり合いも深くなり、指導する側の悩みも多くあるようです。
今回はある指導者の方から寄せられた相談をもとに、「モンスターペアレントに苦戦する指導者の悩み」について考えていきたいと思います。
お母さん達の苦情や要望に困っています。(Kコーチからのご相談)
私はミニバスチームでコーチをしているものです。
私がコーチをやらせて頂いてから約10年、年々保護者の方のモンスター化が進んでいるように思えます。と言うより、少なくともうちのチームではかなり困っている状態です。
主に問題のあるお母さん方は3名。こちらの3名が結束を固め、私にある選手の素行の悪さを訴えたり、采配のクレームや練習内容に対しての不満を訴えてきます。
それは…
- 「もっと平等に試合へ出してほしい。」
- 「基礎ばかりで子供達のやる気が低下する。メニューを考え直してほしい。」
- 「5対5の練習などは上手な子メイン。そんな練習はやめてくれ。」
- 「どうしてうちの子は試合に出られないんですか?」
- 「〇〇君は今日も授業態度が悪かったらしい。そんな子を試合に出すんですか!?」
などというものです。
この3名のお母さん方は「コーチはえこひいきばかりしている」と私のいないところでも不満を漏らしているようなんです。
私としては自分の指導方針や信念を曲げたくないし、それなりに結果も出せていますので、今まで通りのメニューで頑張って行きたいと思っています。
ただ、子供達のためにも保護者の方と理解し合いたいとも思っています。葉月さん、私はどうしたら3名のお母さん達と円滑に付き合っていくことができると思われますか?
親バカとモンスターペアレントの違い
実は私もスポ少での親トラブルは年々増加傾向にあるなと感じています。
保護者の方がモンスター化してしまうきっかけや原因は様々ですが、どのお母さん達にも共通していることは「心から子供を愛している」と言うことです。
私はお父さんやお母さんが子供を愛するがゆえに「親バカ」になることは全然いいことだと思うんです。
ただ「親バカ」と「モンスターペアレント」は全く違いますよね。
たとえば、子供が幼稚園のお遊戯会で「木」の役に選ばれたとします。
「見て!うちの子なんて可愛いのかしら!しっかり役にハマっているわ!」と木の被り物を被ってじっとステージに立っているお子さんの写真を何十枚も撮影するのが、親バカと呼ばれるお母さんで、私はとても微笑ましいく感じます。
そして「どうしてうちの子が木の役なのよ!そんなのもっと地味な子にさせたらいいじゃない!お姫様役はうちの子がいいに決まってる!」と周りを巻き込んで自己中心的な発言ばかりをするのがモンスターペアレントと呼ばれるお母さんです。
親がモンスター化する原因
親バカと呼ばれるお母さんは目の前にいる子供自身を認めているし、とても愛していることがわかりますが、モンスターペアレントと呼ばれるお母さんは、子供に対する愛情以上に自分の気持ちを満足させたという思いが強いという傾向にあります。
そのため、スポ少などで親がモンスターペアレントになってしまう原因はいたってシンプルです。
子供の評価に対する不満や他の子供に対する評価の不満などがきっけとなることは多くありますし、モンスターペアレントと呼ばれるお母さんはそれを「えこひいき」だと主張するでしょう。
そして人間関係の問題は「自分が理解してもらえない」「自分に共感してもらえない」ことから起こることが多くあります。
相手に対していくら正しい論理を伝えても、相手に対して「理解しよう」という思いがなければ人の心を動かすことはできません。
つまり、相手の心や行動を動かすには、相手の気持ちを理解しようとすることがスタート地点だということです。
不公平と不平等の違い
「特定の子供ばかりを指導しないでほしい」とお母さん方に言われるということですが、もし子供達にもこのような不満があるとすれば少し問題かもしれません。
スポーツの世界で「みんな平等!」は難しいですが、指導者はどの選手にも公平でなければならないと考えています。
スポーツでみんな平等にするということは、練習態度や意欲、体力や能力に関係なく平等に試合に出して、平等にポジションを決めるということで、現実的に難しいことだと思いますし、それではせっかく頑張っている選手の意欲を摘んでしまうことにもつながるでしょう。
そして指導者の立場からしても、意欲のある選手、頑張っている選手をさらに伸ばしてあげたいというKコーチのお気持ちもよく分かります。
ただし、それぞれの選手達へ同じようなチャンスを与えてあげること、つまり公平であることが前提で、それが全ての子供達のやる気を摘まない方法ではないかと考えます。
もしかしたら、このようなことに関する認識のズレが、お母さん方に不満を抱かせてしまう原因につながっているのかもしれません。
同感する姿勢でなく共感する姿勢を
次に「練習メニュー」についてですが、自分自身がスポーツを経験したことのないお母さん達は基礎練習の大切さを知らない方も多くいます。
そして小学生である子供達にとっても、基礎的な練習の繰り返しは地味で楽しくないし苦痛だとも思います。
しかし、これから中学・高校でもバスケを続けていこうとする意志があるのなら、なおのこと基礎練習は大切ですよね。
この基礎練習を省いて、子供達が楽しめる練習メニューばかりをすれば、これから続くであろう子供達のバスケット人生をつまらないものにしてしまうでしょうし、基礎がきちんとできていなければ、中学や高校では通用しなくなるかもしれません。
そして問題は、そのことをどのように伝えるかということですよね。
では2パターンの伝え方を例にしましょう。
- 「基礎練習をしっかりしなければ、先に進めませんし、上達もしません。それで子供のやる気がなくなるようでしたら、バスケ自体に向いていないのかもしれませんね。どの子供もこの基礎練をしっかり頑張っているから結果が出せるんです。」と強めに主張する。
- 「そうですよね…僕もよく分かります。基礎練は地味で楽しくないですからね。ただ、ここでしっかり基礎を積んでおかないと、先で大きな怪我につながったり、間違った体の使い方をしてしまうので、やはりここはしっかり頑張ってほしいんですよね。」と相手に共感した上で自分の意見を伝える。
こちらの2パータンですが、どちらの方が相手に伝わりやすいかは明確ですよね。
これはどのような関係にも共通していることですが、自分の意見を全て伝えているうちは、本当に伝えたいことは伝わらないと思っていた方がいいです。
人との信頼関係を築くうえで大切なことは、まず「共感」です。
相手と同じ気持ちになる必要はありませんし、相手の意見に従う必要もありません。ただ、相手の気持ちに寄り添ってまずは相手の気持ちを受け入れる。そして自分の意見を伝える。決して相手を否定しないし、相手の守りたいもの、大切なものを尊重する。
そうすることで、お互いが穏やかな気持ちでコミュニケーションをとることができるのではないかと考えます。
指導者には自分の目を信じてほしい
「選手の素行の悪さを訴えたり…」とありますが、確かにいらっしゃるんですよね、選手である子供達を悪く言う保護者の方。
とても残念で悲しいお話ですが、そんな保護者の発言を鵜吞みにして、コーチが子供を無視したり、練習から外したり、嘘つきだとレッテルを貼ったり、お前は信用できないと人格否定したり・・・。
私はそんな現場も見てきました。
指導者として一体子供達のどこを見てきたんだろうとうんざりさせられます。
でもKコーチさんは自分の目を信じ、子供達を信じているのですから、きっと子供達とさらなる信頼関係を築いていけることだと思います。
お母さん達の情報もないがしろにはできませんが、ご自分の目に映る選手達を信用してあげることも大切だと私は思います。
まとめ
今回は 「モンスターペアレントに苦戦する指導者の悩み」についてお伝えしましたがいかがでしたでしょうか。
スポ少ではお父さんやお母さんが指導者のことで悩んだり、指導者がお父さんやお母さんのことで悩んだり・・・。
それでもスポーツを頑張る子供達を支えて強くしてあげたいという思いは同じはずなのです。
スポーツを頑張る子供達のためにも、お互いが上手に付き合っていけるようコミュニケーションをとることはとても大切なことです。