こんにちは、メンタルトレーナーの葉月です。
今回のテーマは「子供の才能を伸ばすミニバスコーチの指導方法」についてです。
私は主にミニバスと中学バスケットボール部のメンタルトレーニングに携わらせていただいておりますが、今まで色々なコーチの指導を拝見させていただいたり、お話をさせていただく中で、自分自身も子供の頃にこのような指導者の方に出会えていたらよかったな〜と思える素晴らしい指導者の方との出会いもたくさんありました。
色々なチームをみていると、それぞれにカラーがあって、それはオレンジ色のように明るいチームもあれば、赤のように活気あるチームもありますし、残念ながら暗い色のチームもありました。
メンタルトレーナーとして初めてチームに伺う際、指導者は笑っているけれど、子供達の目はビクビクしていてる印象を受けることもあります。
逆に子供達の目が輝いているチームは、指導者の目も輝いていますし、お互いがいい関係を築けているんだろうなと思えるチームもたくさんありました。
今回は私が今までお会いした指導者の方で「この指導方法は真似したい」「このような振る舞いが子供の才能を伸ばす」と勉強になった部分をご紹介したいと思いますので、子供達のスポーツ指導に携わる方にはぜひお読みいただけたらと思います。
子供を指導する中で意識することは「邪魔をしないこと」
私はあるミニバスのコーチから「子供達の自信を育てたい」というご相談のもと、1ヶ月間そのチームにお邪魔しました。
そのチームに感じたファーストインプレッションカラーは「落ち着いたオレンジ色」でした。
そこには子供達の心の安定を感じたし、子供達のメンタルトレーニングを行う環境は十分に整っているなという印象を受けしましたし、その印象は最後まで裏切られることはありませんでした。
つまり子供達の心の安定は「本物」だったということです。
そのため全体的のカウンセリングに合わせ、一人一人のカウンセリングもスムーズに行えましたし、コーチと選手の信頼関係は抜群で、子供の中からコーチの不満やチーム対する不満は何一つ聞くことがありませんでした。
私はコーチへ普段どのようなことに注意して子供達と関わっていますか?と訪ねたところ、こう答えてくれました。
「相手は小学生ですので、何かを与えるというよりは、この子達が持っている自尊心や自主性を摘んでしまわないように気をつけているだけですよ。育てようなんでおこがましい事思っていませんし、とにかく子供の可能性を潰さないようにするのが指導者の役目だと思っています。
よくいるじゃないですか 。自分の教え子が有名になったら俺が育ててやったんだ的に言う指導者が。あれって違いますからね。
その選手にはもとから才能があったんだろうし、自らの力で育ったんだと思うんですよ。ただ指導者がそれを潰さなかったってだけで、その点については素晴らしい指導者だったと思いますけどね。
もちろん私も子供達に対して技術指導は真剣に行いますし、楽しいことばかりでなく、時には辛いメニューも与えますが、それを自分自身に身につけるかどうかは子供自身ですからね。
だから技術指導も大切ですが、まずは身につけようとする意欲や自発的なやる気をどう引き出せるかを考える時間の方が多いかもしれません。
だから葉月さんが言うように大人は考えることを止めちゃいけないなって思います。
そして指導者が子供へ与えられることって限られていますから、そのことをしっかり自覚して、子供の持っているポテンシャルを引き出すサポートをしてあげたいなって思っています。」
ご自身はウィンターカップ出場の経験もありますが、ミニバス時代にはコーチからの暴言や暴力でバスケをやめようと考えたこともあったそうです。
しかし中学の時に出会えた顧問の先生から、今の自分がしているような指導を受け、そのことがきっかけで技術面でも精神面でも急成長を成し遂げ、高校では夢だったウィンターカップ出場を達成できたと話してくれました。
無駄に大きな声で話さない
私が研修で色々なチームの見学に行かせてもらっている時にお会いしたミニバスコーチのお話です。
ミニバスの練習が行われいる体育館って、コーチの怒鳴り声が響いているイメージがあったのですが、こちらのチームは「静かだな…」というのが印象的で、ファーストインプレッションカラーは「スカイブルー」でした。
静かと言ってもスポーツをしているわけですから、もちろん図書館のように静かというわけではありません。
子供達の掛け声は大きく体育館内を響かせていましたし、活気がないとか、ピリピリしている感じでもありませんでした。
私がこのチームの練習を見ていて「これはおもしろい!」という現象がありましたのでそのお話しをしたいと思います。
それはコーチが何か指示を出すと、みんな一斉に一生懸命耳を傾けて聞くんです。
私がいた距離からは何を話しているのかを聞き取れないくらい小さな声でしたが、子供達はその声を一生懸命聞こうとコーチの方へ寄って行きます。
その姿は、まるでカルガモの親子を見ているようで、可愛らしくて思わず吹き出してしまったことを覚えています。
私は練習後、失礼を承知でコーチになぜあんな小さな声で話すのかを聞いたら…
コーチ「別に小さな声で話しているつもりはないですよ…。(笑)ただ無駄に大きな声を出しても、子供達は大きな声を出されていることに意識がいって、会話の内容に意識を向けてくれないんです。葉月さんも大きな声で怒鳴られたら耳を塞ぎたくなりませんか?」
葉月「あっ…。確かになりますね!話すら聞きたくないかもしれません。」
コーチ「ですよね。でも、無駄に大きな声を出すことを止めれば、子供達は僕の言葉にきちんと耳を傾けてくれます。特に敗戦後のミーティングなんかでは怒鳴りたくなることもありますが、それではただ自分の感情を子供達に伝えているに過ぎませんので、子供達も聞きたくありませんよね。本当に大切なことは、何を伝えるかよりもどうやって伝えるかだと思うんです。」
葉月「なるほど…。でもコーチの中には厳しく指導しないと子供にバカにされる!なんて方がいますが、その点はどう思いますか?」
コーチ「いくら怒鳴って服従させた気になっても、実際は子供達にバカにされている指導者なんて沢山いますよ笑笑。ただ本人が勝手に俺は一目置かれているんだ〜!って勘違いしているだけですよね?指導者自身がしっかり自分の信念を持っていなければ、どんな振る舞いをしてもバカにされるし、大事なことはいかにお互いがお互いのことを分かりたいって思うことじゃないですか?」
葉月「お互いがお互いを分かりたい…。理解し合える関係が大切だってことですか?」
コーチ「そうですね。それが信頼関係を築くためには必要なんだと思います。僕も子供の気持ちを理解したいって思うから子供の話には真剣に耳を傾けますし、だから子供達も僕の話を真剣に聞いてくれるんだと思います。」
葉月「などほど…。それでカルガモの親子ですか…。」
最後に子供達とも話をさせていただいたのですが、みんなコーチの色々な話をしてくれました。
みんなコーチが大好きなようで、練習が終わった後もコーチが車に乗るまで、これまたカルガモの親子のように後ろをついて行って「コーチ!明日早く来るので俺のシュートフォームを見てくれませんか?」「えっ?ずる!俺も!俺も!」「コーチ!僕、今度〇〇チームとリベンジ試合がしたいです!」とずっと子供達が後を追って話しかけていました。
指導者からの威圧的な言葉が増えれば子供の言葉が減り、指導者から言葉が少なくても気持ちが繋がっていれば子供達の言葉が増えるのかもしれませんね。
こちらのチームからは「信頼関係の築きかた」を教わり、とても勉強になりました。本当にありがとうございました。
子供に指導体験をさせるアウトプット法
こちらも私が研修でミニバス巡りをしている時にお会いしたチームのお話です。
基本的に指導は指導者であるコーチが行いますが、こちらのチームは定期的に上級生が下級生へ指導する時間を子供達へ与えています。
その内容は、基礎+自分達が学んだことを下級生に教えなさいというものです。
まぁ、それはそれは悪戦苦闘するわけで、中には「違う!何回も教えてるやん!」って感情的になちゃう子もいて、それを静かに見守るコーチ。
私は隣にいるコーチへ、この練習の本当の目的ってなんですか?と聞いてみたら…
「これはアウトプット法です。子供達はインプットしたことよりも、アウトプットしたことの方をよく覚えているし、人に教えることが選手自身の学びにもつながります。そして何より私の気持ちを分かってくれるでしょ笑笑。このメニューが終わった後はそれぞれのチームに分けて試合をさせて、それぞれの反省点を考えさせます。それにみんなこのメニューが好きなんですよ。」
と答えてくれました。
そして子供達とは「会話をする」ことを意識していると話してくれました。
指導者が言いたいことを一方的に伝えているだけでは、子供に全てを伝えることはできないし、子供達は自分が質問されて自分が答えたことや話したことを「力」として自分の中に吸収していくし、指導者のそのサポートをすることが大切だと実際の指導の中で学んだとのことです。
こちらのチームからは「会話の大切さ」と学ばせていただきました。本当にありがとうございました。
まとめ
今回は3人のミニバスコーチのお話をさせていただきましたがいかがでしたでしょうか。
文章では全てをお伝えできなので、それが残念でなりませんが、こちらの指導者の方に共通するのは「子供ファースト」だということでした。
もちろん、暴言や暴力で子供の感情をコントロールしようなんて発想がありませんし、保護者の方達もとても穏やかな印象を受けました。
メンタルトレーナーとして活動していると、子供達の辛い状況に出会うこともありますが、1人でも多くの子供達の夢が実現化できるように心から願います。