メンタルトレーナーの葉月です。
私は主に小学生と中学生のメンタルケアに携わっておりますが、実際にスポーツの現場で子供達を見ていると、いくら心を充分にトレーニングしても、そこに技術的スキルや丈夫な身体が伴っていなければ、結果につながりにくいですし、特にジュニア世代の子供達は「スポーツをするために必要なエネルギー」に加え、「成長に必要なエネルギー」「日常生活に必要なエネルギー」の補給もする必要がありますので、1日を通してバランスの良い食事を心がけることが大切です。
前回スポーツ栄養士の林先生に「プロテインの効果的な飲み方と子供が飲む時の注意点」についてお話いただきましたが、今回は「競技別に考えたい食事内容」と「スポーツをする子供の食事法」などについてご教授いただきましたので、お子さんがスポーツする保護者の方はぜひご参考にされて下さい。
競技別に必要な栄養を知る
子供達が「スポーツで勝てる丈夫な体」をつくるには、 現在している競技に必要な栄養素を知ることが大切です。
バスケットボール、野球、サッカー、陸上、水泳、テニス、バレーボール、バトミントン、柔道、剣道など様々なスポーツがありますが、体の使い方やトレーニング内容もそれぞれ異なるため、1日に必要なエネルギーの摂取量は競技内容によって異なります。
例えば、バスケットボールやサッカーなどの競技では、「一瞬の判断」や「体のキレ」はもちろんのこと、パワーやスタミナが必要となり、そこには「瞬発力」と「持久力」が要されますし、短距離走や野球などの競技では、短時間のうちに持続的なパワーが要求されるため、瞬発力を高めるための筋肉を作る必要があります。
瞬発力を高めるには
瞬発力を発揮させるためには、 瞬間的に大きな力を出してくれる筋肉が必要となります。
その素となるのが皆さんもよくご存知の通り「たんぱく質」です。
たんぱく質と言えば「肉」を想像されるお母さんも多くいると思いますが、唐揚げやとんかつ、ステーキなどには脂質が多く含まれており、血液をドロドロにしてしまいますので、毎日のように揚げ物や高カロリーなステーキや焼き肉ばかりを食べさせるのは理想的だと言えません。
スポーツをする子供にとって、理想的なたんぱく質の摂取方法は「脂質が少ない肉や魚」と「大豆製品・乳製品」などです。
ササミや鶏肉、鮭、納豆、卵料理などがおすすめです。
瞬発力を要するスポーツ野球、バレーボール、ソフトボール、短距離走、空手など
瞬発力と持久力を高めるには
上で説明した瞬発力を高める栄養素「たんぱく質」に加えて、持続的に頭をフル回転させて体を動かすためには、炭水化物の補給が欠かせません。
また、汗をかくことでミネラルを失うため、ミネラルの補給も重要です。
練習後の夕食では、筋肉を修復してくれるたんぱく質、エネルギー源となる糖質、筋肉の疲労を回復してくれるクエン酸を摂るように心がけましょう。
瞬発力と持久力を要するスポーツバスケットボール、サッカー、水泳、テニスなど
栄養不足が招くスポーツでの怪我
子供達は成長と共に骨の量も増加していき、骨密度は10代後半から20代前半にピークを迎え、その後は少しずつ減少していくと言われています。
そのためプロのアスリートを目指す子供達は、成長期にしっかりとカルシウムを摂取することが大切とされています。
ところが厚生労働省が毎年行っている「国民健康・栄養調査」によれば、日本人のカルシウム摂取量は例年、目標値を下回っていることが報告されています。
カルシウムが不足すれば、骨も筋肉も弱くなり、怪我のリスクを高めてしまうため、スポーツをするジュニア世代の子供達は、特にカルシウムを軽視してはいけません。
また、カルシウムには神経の興奮を静めて精神を安定させてくれる働きがあるため、カルシウムが体内から不足してしまえば、イライラしやすかったり、集中力が低下したり、判断力が鈍くなったりといったことが起こってしまいます。
栄養不足が招くパフォーマンスの低下
試合の前半は勢いがあっても、後半になれば、スピ―ドが落ち、判断力は低下し、気が付けば思うようにプレーができなくなっている・・・。スポーツをする子供達にはよく見られる光景です。
サッカー、バスケットボール、テニス、長距離ランナーなど、持久力を必要とされるスポーツであれば、この「スタミナ」こそが勝敗の分かれ道だと言っても過言ではないかもしれません。
試合中の筋肉疲労を防ぎ、スタミナを高めるのに活躍してくれるのが、たんぱく質のもと「アミノ酸」になりますが、これが不足することで、筋肉の収縮性や瞬時の判断力の低下させ、パフォーマンス低下を招きますので、毎日の食事からしっかりと栄養を摂取することが大切です。
また、アミノ酸が「スポーツをする子供達へ欠かせない効果」を発揮してくれるのは試合中だけではありません。
運動後には必ず「筋肉の合成と分解」が行われます。
その際に必要な栄養素が足りていなければ、分解の増加が合成を上回り、運動をしたのに、筋肉が減ってしまうという事態を引き起こします。
ただし試合後に素早くアミノ酸を摂取することで、激しい運動で傷ついた筋肉を修復し、また翌日からの練習へ備えた身体をつくってくれます。
運動後にもしっかりとアミノ酸を摂取することが大切です。
アミノ酸が発揮するおもな効果
- 成長ホルモンの分泌を促す
- 瞬発力が上がる
- スタミナアップ
- 「やる気」「集中力」の向上
- 筋肉疲労を予防し、より早く回復する
- 体力・免疫力を向上
- 筋肉の質を向上
アミノ酸は「脳のエネルギー」とも言われ、バスケットボール、サッカー、テニス、バレーボール、野球のように 集中力の維持が必要な競技には特に必要不可欠な栄養素だと言えます。
体を強くする基本献立パターン
では次に「基本献立パターン」をご説明します。
食事の基本はやはり「1日を通してバランスの良い栄養」を摂取するということです。偏った食事では、疲労回復や筋肉の修復にも大きな影響が出てしまいます。
子供達の年齢と運動量に応じて、しっかり食べさせてあげることが大切です。
1.主食
お米、パン、うどん等の麺類
2.主菜
肉、魚、豆、卵等のたんぱく質を多く含む食品
3.副菜
野菜(特に緑黄色野菜)、芋類のおかず
4.スープ
野菜やきのこ、海藻のスープ
「牛乳・ヨーグルト・チーズ」などの乳製品や果物も一緒に摂取しましょう。
スポーツをする子供に欠かせない栄養素
運動時のエネルギー源「糖質」
糖質は即効性が高く、効率のよいエネルギー源です。
分解・吸収が早いことも特徴のひとつで、ビタミンB1と一緒にとることで効率よくエネルギーに変えてくれます。
運動後にしっかりと食事をすることで筋肉の成長にも重要な働きかけをしてくれます。
炭水化物を多く含む食品
- お米
- パン
- うどん
- パスタ
体の構成を担う「たんぱく質」
たんぱく質は、筋肉や骨、腱や靭帯など、体のすべてを構成している栄養素で、筋肉や臓器など体の細胞の主成分となります。
運動をした後の筋肉細胞は少なからず損傷するのですが、それを修復し、再生していくことで筋肉は増強していきます。たんぱく質には、その壊れた筋肉を修復してくれる働きがあります。
怪我の予防や回復のためにも、1日3食の食事の中で必要量をしっかりと摂取することが大切です。
たんぱく質を多く含む食品
- 肉類
- 魚類
- 牛乳
- チーズ
- 大豆食品
筋肉の働きを調節する「ミネラル」
ミネラルには、ナトリウム・マグネシウム・カルシウム・カリウム・鉄・亜鉛などの成分があります。
みなさんもご存知の通り、骨や歯はカルシウムから作られています。しかし、カルシウムは体内ではつくることができない上に排泄や汗で流れ出てしまうので、常に不足しがちになるため、食事からしっかり摂ることが必要です。
また、ミネラルには「筋肉や神経の緊張や興奮をおさえる」という役割があります。
そのためミネラルが体内から不足してしまえば、熱けいれん、骨折、こむら返りなどを引き起こす原因となってしまうことがあります。
また、マグネシウムには、骨に弾力性を与え、しなやかな骨を作る働きと共に、カルシウムが骨や歯に行き届くよう調整する働きがあります。
怪我をしない丈夫な体をつくるには、食事の中で「マグネシウム」「カルシウム」「鉄」「亜鉛」などのミネラルをバランスよく摂取することが大切です。
ミネラルには骨などの体の組織を構成したり、体の調子を整える働きがあるのです。
マグネシウムを多く含む食品
- アーモンド
- 落花生
- 干し海老
- カキ
- はまぐり
- いくら
- ほうれん草
- にぼし
- 青海苔
- わかめ
カルシウムを多く含む食品
- 桜海老
- プロセスチーズ
- わかさぎ
- しらす干し
- 牛乳
- ヨーグルト
- 油揚げ
- ひじき
POINT子供が大好きな炭酸ジュースには食品添加物の一つとしてリン酸が用いられています。
炭酸ジュースを飲むとリンを過剰に摂取してしまい、カルシウムがうまく吸収されないため、血液中のカルシウムが不足してしまいますので、炭酸ジュースの飲み過ぎには注意しましょう。
鉄を多く含む食品
- レバー
- あさり
- しじみ
- 牛肉
- マグロ
- ひじき
- 小松菜
亜鉛を多く含む食品
- 牡蠣
- 和牛もも肉
- 豚レバー
- うなぎ
- 豚もも肉
- 納豆
- ホタテ貝
- 鶏レバー
- アーモンド
- 鶏ささみ
ケガの回復・予防には「コラーゲン」
たんぱく質の一種であるコラーゲンは、関節などの結合組織を強化をしてくれます。
そのためコラーゲンは、靱帯・腱・骨・軟骨などに欠かせない大切な栄養素です。
骨の材料としてはカルシウムがよく知られていますが、骨はコラーゲンの網目の中にカルシウムが入って形成されています。
骨の材料となり、関節の動きをスムーズにしてくれるコラーゲンは、骨折・捻挫・アキレス腱のケガ予防や回復に効果的です。
また、軟骨などの形成にはコラーゲンの接着力を高めてくれるビタミンCやビタミンK、鉄、亜鉛も必要となります。
コラーゲンを置く含む食品
- 豚足
- 鳥の皮
- 手羽先
- 牛すじ
- すっぽん
- フカヒレ
- 魚の皮
- ウナギ
- カレイ
- エビ
- くらげ
- ゼラチン
- ゼリー
- プリン
- 杏仁豆腐
ビタミンCを多く含む食品
- アセロラ
- レモン
- 苺
- 柿
- 黄色ピーマン
- ブロッコリー
ビタミンKを多く含む食品
ビタミンK1は、植物の葉緑体で作られるため、緑色の濃い野菜や海草、抹茶などに多く含まれます。
葉緑体は太陽がよく当たる葉の表面にたくさん分布しているので、ビタミンK1も葉の表面にたくさん含まれています。ビタミンK2は微生物によって作られるため、納豆などは補給源として最適です。
POINTケガの予防には、体脂肪のコントロールも必要になります。
脂肪には、エネルギー源や内臓を守るという大切な役割がありますが、摂取量が多すぎると体への負担が大きくなり、ケガの原因となってしまいますので、摂りすぎには注意しましょう。
試合の後で疲れているからこそ食事が大切
試合や練習の後に、疲れて食欲がないからと食事を抜いたまま寝てしまえば体の疲労が十分に回復できません。
そんな時は、カレーライスや中華丼、焼きそばなど1品で炭水化物とたくさんの栄養素がとれる食事法がおすすめです。
また、温かい食事は体温を上げてくれます。
体温が上がれば免疫力がアップするとともに、血行が良くなり血液量が増え、疲労回復を早めてくれます。
お子さんが少食な場合は・・・
スポーツをしている子は食欲旺盛なイメージがありますが、なかには「練習よりも食べることの方が辛い」と言う子供達も少なくありません。
確かに食が細い子にとって、たくさんの食事をとることはとても辛いもの。
そこで、お子さんが気づかぬうちにたくさんのご飯を食べられる方法をとりましょう。
お米をたくさん食べれない子にはおにぎりを、食パンが1枚しか食べれないのなら、6枚切りよりも5枚切りを。
そしてたくさんの栄養素を少量ずつバランスよく摂取できる食事を用意してあげればいいのです。
一番よくないのは、主食だけですませたり、主食は残して主菜と副菜だけを食べるといったように、騙った食べ方です。
ここはお母さんの腕のみせどころ。色々な工夫でお子さんのスポーツパフォーマンスを向上させてあげましょう。
朝食も大切です!
朝の食事は体のリズムを整えるうえでも、1日の活動を開始するうえでもとても重要です。
時間がないからと朝ごはんを抜いたり、パンや白米のみといった炭水化物だけにならないようしっかりと栄養を補給しましょう。
朝食では、温かいものやたんぱく質を充分に摂ることが望ましいでしょう。
まとめ
今回はスポーツ栄養士の林先生より 「ジュニアアスリートを支えて伸ばす食事法」についてお話いただきましたがいかがでしたでしょうか。
日頃の食事からしっかりと栄養をとって、丈夫な体をしっかりつくってあげましょう。