スポーツをする子供が抱く不安や恐怖心の原因と親がしたい言葉かけ
子供の精神が不安定になる原因
花ちゃんも「気持ちが悪くなってしまう原因」が分からなければ、ずっと不安だと思います。
今回のように体に異変がでる場合でも、精神的な負荷が原因で起こるパターンは多く見られます。
その主なきっかけは「プレッシャー」「緊張」などがあげられますが、本人もそのことに気づいていないパターンは多く、そのことが原因で脳が否定的になって体に症状が現れることがあります。
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子供の深層心理
私はスランプに陥った子供やイップスになった子供を見てきましたが、この時に選手が抱える全ての辛さを本当に理解してあげられる人はいないと思っています。もちろんそれは親も例外ではありません。
だからこそ、このような状態になった時は子供の気持ちを受け止めてあげることが大切なんだと思います。
今は花ちゃん自身が自分に対して否定的な考えを抱いてしまっているため、それは小学生の花ちゃんにとってはとても辛い状態だと思います。
- チームに迷惑をかけてしまった自分
- お母さんの期待に応えられない自分
- 最後まで踊ることができなかった自分
そこで私が子供達との会話で一番多く使うキーワードは「大丈夫だよ」です。
子供が自分自身に否定的になっている状態のままでは「頑張って前に進まないと」という思いはあっても、体と心がついていかずさらに辛くさせてしまうことがあります。
子供達は無意識のうちに「失敗をする自分」や「周りの期待を裏切ってしまう自分」を恐れていますので、その不安が自分につきまとっているうちはメンタルが不安定なままで整えることは難しいでしょう。
花ちゃんが一番不安に思っていることも、「また気持ち悪くなるんじゃないか」ではなく、「もしも気持ちが悪くなったら、みんなに迷惑をかけてしまう」「また同じようなことが起きたらお母さんを悲しませてしまう」ということではないでしょうか。
人が不安を抱く時は、目の前の事実の裏に必ず「違う真実」があるものです。
その「違う真実」を大人が受け止めて「大丈夫だよ」と背中をポンポンと叩いてあげことで、花ちゃんの重たい荷物が肩から下ろされるかもしれません。
子供の気持ちを置き去りにしない
メンタルのケアは指導者でも保護者の方でも教科書を読めば誰でも行えるように思えますが、実は指導者や保護者の方が行う場合は、私たちメンタルトレーナーが行うよりも注意しなければならない点があります。
それは「子供の気持ちを置き去りにしない」ということです。
大人があまりに熱心になりすぎてしまえば、子供はさらにプレッシャーを抱えることになります。
私たちメンタルトレーナーは子供の心の安定を一番に考えますが、指導者の方や保護者の方はどうしても結果を求めて少し子供より前を進もうとしてしまう傾向にあります。
ジュニア世代のメンタルを安定させるために必要なことは、子供と同じ歩幅で歩いていくことです。
特に女の子は、競技パフォーマンスを否定されることを自分人身を否定されることと受け捉えがちなため、できていない部分にフォーカスするよりも、頑張っている部分、努力している部分にフォーカスして認めてあげるとメンタルを安定させやすいと考えられています。
トラウマを克服させた指導者の話
私がメンタルトレーナーになったきっかけは、バスケをしている息子達の影響でした。
これは息子が小学生6年生になった夏の大会のお話です。
息子はいつも通り試合へ出発したのですが、実際に試合を開始してから10分ほど経った時に「過呼吸」を起こし、試合続行が困難だと判断されてベンチへと戻されました。
そして試合の後半戦、落ち着きを取り戻した息子は再びコートへ立ちました。その日の試合は夏の県大会をかけた大切な試合だったので、息子も気持ちを強く持ってくれたんだろう…と私はホッとしたことを覚えています。
しかしコートへ戻ってしばらくすると、また息子の様子に違和感を感じました。
呼吸が浅く荒くなり、そのままコートへ倒れたと思ったら、足も引きつけを起こして歩くことすらできない状態が起こりました。
息子は周りの大人達にコートの隅に運ばれて、結局その試合で最後までプレーを続けることはできず、その後は失点続きでチームも負けてしまいました。
それから息子は、過呼吸やこむら返りを起こすことはなく、秋季大会でチームは大きな結果を残すことができ、無事に笑顔で卒団することができました。
しかし、その出来事が不安要素となって顔をだしたのは、中学生になった時でした。
私に「俺、バスケ向いてないかも…辞めようかな」と言ってきたことがありました。その理由を聞いてみると「たまに意味のない不安に襲われそうになって、胸が苦しくなるんだ…。」とのことでした。
そして息子の話をじっくり聞いて分かった原因が「ミニバスで経験した夏の出来事」だったのです。
それは本人も気づいていなかったのですが、あの時に言われたコーチからの言葉がトラウマとなって息子をずっと苦しめていたのです。
「お前のメンタルが弱いせいで大切な試合で負けてしまった。お前よりも試合に出たいって思っているやる気のある選手はいるし、また同じようなことがあったらベスメンから外すからな!分かったら気持ちを強く持ってくれ!お前の弱さに付き合うほど俺は優しくないぞ。」
と言われたそうで、あの時のコーチの言葉と表情がずっと心に残っていたのです。
私はその後、当時の部活動顧問に相談しました。
すると先生は「分かりました。では彼が安心できるような環境を整えましょう。もしもこの先同じような状態になっても対応できる環境を用意します。」と言い、足がつった時の対処法や過呼吸に対する対処法を自らが学んでくれ、息子に「先生に任せろ!これでいつでも大丈夫だから、お前は安心してプレーすればいい。」と言葉をかけてくれました。
そして小声で「お前のことを理解しようとしない指導者はもうここにはいないからな。ここではみんなお前の味方だ。」と言ってくれたそうです。
それから息子はずっと抱えていた、不安やモヤモヤした気持ちがスッキリなくなって今は高校でバスケを楽しそうに続けています。