試合前の選手にかける言葉「緊張するな・失敗するな」はNGワード

2015年12月11日ペアレーチング

過度な緊張を感じた時は

バスケットボール

緊張感は集中力を高め、競技パフォーマンスの向上に繋がるとお伝えしましたが、その緊張感が高まりすぎて耐えきれなくなれば、プレッシャーや不安、恐怖感からパフォーマンスの低下を招いてしまいます。

その時に大切なことは、「緊張してはいけない」と言い聞かせるのではなく、緊張しているという感情を頭でしっかり子供に認識させることです。

起こってしまった現実と無理に立ち向かおうとすれば、子供達にとって大きなストレスとなってしまいます。

「緊張することは悪いことじゃなく、それは当然のこと。やるべきことをやったら大丈夫。勝てる見込みは十分にあるよ。」 と実際の行動へと導いてあげることが大切です。

緊張と向き合う方法

これは私がメンタルトレーナーとして携わっている男子バスケットボール部に所属する選手と私の会話です。

葉月「明日はいよいよ新人戦だけど、今の状態はどうよ?準備は万端?」

健太「いや、今から緊張しててヤバいです。今からこんなに緊張してたら明日はどうなるか…」

葉月「どうして?緊張なんて誰でもするし、緊張感のない試合なんてつまんないでしょ。楽しまなきゃ!」

健太「でも、緊張すると動きは悪くなるし、シュートが入らなくなるし…。とにかくヤバいですって」

葉月「よし、健太!とりあえずその“ヤバい発言”禁止ね!だって何にもヤバくないから(笑)」

健太「いや、ヤバいですって(^_^;)」

葉月「ヤバいのは健太の思い込みよ。緊張するとパフォーマンスが低下してシュートが入らなくなる、そんな自分はヤバいって思い込みね。健太は過去の経験からそう感じてるのかもしれないけど、それ違うからね。そうやってマイナスのイメージばかりしていると実際にそれが起こってしまうというか…そういうふうに行動しちゃうもんなのよ。だから緊張している自分はヤバいって発想はやめて、この際緊張している自分と向き合ってみてはどう?」

健太「向き合うってどうやって?いつも気持ちを落ち着かせようとするけど結局ダメなんですよ」

葉月「無理に気持ちを落ち着かせようとしても、簡単にはコントロールできないから、自律神経をコントロールして気持ちを整えてみようか。」

健太「自律神経ですか?」

葉月「そうよ。じゃあ…まずは深呼吸ね!鼻から思いっきり息を吸って!はい、じゃあ次はゆっくり口から吐いて…。これを何度か繰り返すの」

葉月「どう?少し落ち着いた?」

健太「すごい(笑)なんかドキドキが少し治りました!!」

人が緊張すると心拍数が上がり胸がドキドキします。スポーツをするうえで適度な緊張感は必要ですが、その緊張に耐えきれなくなってしまえば、自律神経のバランスが崩れ、呼吸は浅くなり心が乱れてしまいます。

心拍数は呼吸によって変化するため、呼吸を深くしてゆっくり吐くことで心拍数は下がってくれ、メンタルを整えるのに大きな効果が期待できるとされています。

今回話した健太ですが、翌日の試合では得意げになって試合で活躍してくれました。

否定形より肯定形の言葉かけを

バスケットボールの試合

親も指導者も「選手へかけてはいけない言葉の決まり」は否定形の言葉です。その中でも特に避けたいフレーズが「失敗するな」「負けてはならない」などの言葉です。

親や指導者が過去の負けや失敗を引きずって、「失敗するな」「負けてはならない」と否定の言葉を使うことで、選手の脳には「負けている自分」や「失敗している自分」を無意識にイメージさせてしまいます。

つまりそれは、ネガティブの種を周りの大人がわざわざ撒いてあげているということなのです。

ネガティブなイメージや思考は選手のパフォーマンスを最大限に低下させてしまいますので、否定形の言葉は絶対にNGです。

例えば、「練習をサボるな」ではなく「練習は真剣に取り組もう」、「失敗するな」ではなく「成功させよう」の方が、子供達を前に進ませてあげることができますし、とても意図が伝わりやすいと思います。

特に相手はまだ子供ですので、大人の言葉を素直に受け止めるため、その影響は大人以上なのです。

親の気持ちを満たす言葉かけは不要

野球の試合

試合前の言葉かけは肯定形であることが大切だということを伝えしましたが、残念なことに「これを言えば絶対に大丈夫!」という絶対的な答えはありません。

つまり、その子がその場で何を言われたらどう感じるのかは、その時の子供の立場に立って考えるしかないということです。

その時に大切なことは、「親として子供に何かを言ってあげたい」などのように親の気持ちを満足させるのではなく、お子さんにとっては何が最善なのかを考えると、おのずと答えが出てくるのではないでしょうか。

それはもしかしたら、今は声を掛けずに見守ることが最善な方法かもしれませんし、試合とは全く関係ない話をしてあげることかもしれません。

まずは「お子さんの精神状態がどういった状態なのか」ということから考えてあげましょう。

最後に

今回は 「試合前の選手にかける言葉「緊張するな・失敗するな」はNGワード」についてお伝えしましたがいかがでしたでしょうか。

ひと昔前のやり方では「気合で乗り切れ」そんな感じが主流でしたが、正直言って現在ではそんなの通用しません。

体を鍛えるのと同様、プロを目指す選手はメンタル強化も意識して行っていますので、そんな選手に挑むには、やはり心を整える方法を知っておくことが必要です。

心を整える方法を知っている子は、ここぞという場面で大きな力を発揮することができますし、そのことで更なる自信をつけてどんどん成長することができるのだと思います。

2015年12月11日ペアレーチング

Posted by 葉月 愛