スポーツをする子供がココロを強くして本番で勝てる選手になる方法
子供達が力を発揮するために指導者が準備するものとは
今までは「脳の仕組み」についてお話ししましたが、彼のように脳のスイッチが「不快」に入ってしまうのは、周りにいる大人の言動にも原因があることが少なくありません。
たとえば指導者は選手達へ「挑戦しろ!」「チャレンジしろ!」というばかりで、選手が挑戦できる環境準備していないことが多くあります。
「もっと攻め気でいけ!」と言っていたコーチが、いざ選手が攻めるプレーをしたがボールを相手に奪われれば「何をやってるんだ!!」と選手を責めるなんて光景はよくあります。
これでは選手が挑戦できる環境を準備しているとは言えませんし、選手に「恐れ」や「不安」を抱かせて行動に制限をかけているだけです。
人の行動が鈍る原因の一つが「恐れ」なのです。「失敗したら怒られる」という恐れや不安が「迷い」となり、選手のパフォーマンスを低下させてしまうのです。
もちろん子供達のミスを全て良しとするべきだとは言いませんが、子供達が挑戦することは大人が想像する以上に勇気のいることです。もしも挑戦が招いた失敗を指導者や保護者の方が責め続ければ、子供達は挑戦することをしなくなってしまうだろうし、それはスポーツをする楽しさを子供達から奪ってしまうことに等しいのではないでしょうか。
もし失敗しても、そこから学べるものがあればそれでいいんだよと、「失敗した時の着地点」を準備してあげると選手はスポーツへもっと前向きに取り組めるのではないでしょうか。
脳を「快」の状態で保てる子
先ぼど話した選手を例にしても、多くの子供達は試合に負けるとマイナスのデータばかりを脳に入力してしまうので、脳はどんどん「不快」になってしまいます。
しかし扁桃核を「快」の状態を保つことができる選手が存在するのも事実で、そのような子供達が持つ特徴の一つに「負けず嫌い」という特徴があります。
負けず嫌いの子供達はそうでない子供達と違って、負けたことに対して「駄目だった」ではなく「次は絶対に負けない」という思いを脳に入力します。
つまり負けた相手に対しても脳が「不快」ではなく「快」になるのです。
そしてまた同じ相手と戦うときには「不安・恐怖」ではなく「雪辱のチャンス」だと快になる。
これが負けず嫌いの子供達が脳にある扁桃核を「快」に保つことができる理由です。
選手である子供達は「あいつの方が上手いから仕方がない」と諦めのいい選手になってはいけませんし、指導者や保護者の方は子供達に「不安」や「恐れ」を感じさせる言動をしてはいけません。
選手にとって悔しさとは大きなエネルギーなのです。敗北感をマイナス方向ではなく、強力なプラスの方向に変えられる負けず嫌いになることが、本番で力を発揮することにつながるのではないでしょうか。
「イヤなことは忘れる」も大切
「イヤなことは10歩あるく間に忘れる」
これはプロゴルフプレーヤーのタイガーウッズ選手の言葉です。
実はこれ簡単なようで意外と難しく、スポーツをするうえでかなり厄介なことなんです。
たとえばたった一つのミスから調子が悪くなり、次から次にミスをしてしまうという経験はないでしょうか。
その時の「きっかけ」は「たった一つのミス」だと思われがちですが、実はそのミスを引きずってしまっている自分自身に原因があるんです。
本番中のミスや指導者から言われたイヤな言葉、過去にした失敗など、そのような記憶は脳をネガティブなものにしてメンタルの乱れを引き起こしてしまいます。
だからといって無理に忘れようとしてもうまくいくわけがありません。忘れようとすればするほど残念なくらいに頭から離れないものです。
そこで利用するべきなのが、人の脳の仕組みです。
人の脳は「否定的な思考」と「肯定的な思考」が共存することはありませんので、忘れようとするのではなく、肯定的な思考で上書きすればいいのです。
よく「ピンチをチャンスに変える」などという言葉が使われますが、まさにそれです。
ピンチをチャンスにする選手の話
私がメンタルトレーナーとして携わっている中学男子バスケットボール部の選手に、チームがピンチ状態になった時ほど「覚醒」する選手がいます。
本人もそのことを自覚していて「俺は相手が強ければ強いほど覚醒する」「チームがピンチになった時ほど覚醒する」と言っています。
私は彼に「ピンチの時でも諦めずに力を発揮できる底力ってどこから湧いてくるの?」と聞いてみました。
すると彼は「チームがピンチの時こそ腕の見せ所だとワクワクするんです。自分は目立ちたがり屋ですから」と照れながら答えてくれました。
私は思わず彼に拍手しました。いくらセンスや才能があっても、諦めたり、心が折れてしまった選手は、このようにワクワク感を持てる選手には敵いっこないのです。