スポーツ指導でメンタルトレーニングが必要な理由|コーチングの理念

2015年12月8日コーチング

スポーツ活動をする少女たち

祝日や週末に学校へ行くと、グランドではサッカーや野球の試合が、体育館ではバスケットボールやバレーボール、バドミントンなどの試合が行われています。

子供達はスポーツ少年団や部活動で、体だけでなく心も鍛えられながら成長していくわけですが、「ここぞという時に心が折れる」「失敗したことがきっかけで心が乱れた」「スランプに陥った」など、辛い経験もたくさんします。

熱心に指導しているコーチからすれば、そこは気合を入れて頑張ってほしいところかもしれませんが、指導者や親が叱咤激励してメンタルが強くなるほど、子供達の心と脳は単純なものではありません。

つまり、子供達のメンタルは、周りの大人達が鍛えようと意気込んだところで、どうにかなるものではないということです。

今回は 「スポーツ指導でメンタルトレーニングが必要な理由|コーチングの理念」についてお伝えしたいと思います。




メンタルトレーニングの始まり

1981年にカナダで開催された「国際スポーツ心理学会」では、メンタルトレーニングが大きく取り上げられました。

そこには日本のスポーツ心理学者も参加したのですが、そこでは日本との大きな違いに大変な衝撃を受けたといいます。

また、1984年のロサンゼルスとサラエボオリンピックでは、アメリカが12種目にメンタルトレーニングを導入し、多大な成果をあげたことが話題になりましたが、同時に日本の選手たちが自分達の力を十分に発揮できなかったことが報告されました。

そのことがきっかけとなって、1985年から日本体育協会の「スポーツ選手のメンタルマネジメントに関する研究」が始まり、日本でもメンタルトレーニングという言葉が使われるようになったそうです。

メンタルトレーニングの基本概念

1985年に日本体育協会は、日本におけるメンタルトレーニングの基本概念を以下のように示しました。

「メンタルマネジメントは耳新しい用語であるが、精神の自己管理を意味している。スポーツ選手のメンタルマネジメントは体力や技術のトレーニングと同様に、競技場面で最高のパフォーマンスを発揮するために必要な精神的な側面を積極的にトレーニングして精神力を高め、自分で自分の精神を管理(またはコントロール)できるようになることを目指して行われるものである。」

メンタルトレーニングの目的

メンタルトレーニングの基本概念で示されているように、スポーツをする子供達やスポーツ指導をするコーチが、選手のメンタルを鍛えたいと願う最大の目的は 「本番で十分な力を発揮する」ことだと思います。

しかし、メンタルトレーニングという言葉だけが一人歩きして「折れない心」「諦めない心」の大切さを理解していても、何をどうしたらいいのか分からないという子供達は多く、「心が折れてしまう自分」「途中で諦めてしまう自分」と悪戦苦闘してしまう選手も多くいます。

それはメンタルを鍛える最大の目的が「本番」や「目標」を意識しすぎるから、何をどうしたらよいのか分からなくなってしまうのです。

そもそもメンタルは「鍛える」というものではなく、「整える」というイメージでメンタルトレーニングすることで安定したメンタルを手に入れることができ、本番で十分に力を発揮することができるのです。



メンタルを整える最大の武器は達成感

スポーツをする子供達のモチベーションを保ってメンタルを安定させるためには「達成感」を欠かすことはできません。

ずっと一定レベルのトレーニングを行なっていても達成感は感じられないし、勝てて当たり前のチームに勝ち続けても達成感は得られません。

つまり達成感は、今までできなかったことや、簡単にはできないであろうことを成し遂げることで感じることができるのです。

例えば、中学生レベルの頭脳を持った子が、小学1年生で習う足し算を解いても達成感は感じられません。

しかし、同じ子が高校生レベルの問題を試行錯誤しながらも自力で解くことができれば、達成感を感じることができるでしょう。

このように 「頑張らないと達成できない目標」をクリアし、達成感が得られると自分にどんどん自信がついてきます。そして、この達成感の積み重ねが折れない心を育ててくれるのです。

「あきらめない心」を育てるのも達成感

スポーツをしていれば、色々なチームや選手と対戦する機会があると思います。中には「どう考えても勝ってこない」と後ずさりしてしまうような、強豪チームと戦うこともあるでしょう。

しかし、その強豪チームを相手にベストを尽くして決めた1ゴールは、子供達にとって将来を支える「達成感」へとなってくれるはずです。

例えば、自分達よりも弱いチームに100対0で勝った試合と、自分達よりも強いチームに35対48で負けた試合とでは、どちらが子ども達の自信やエネルギーとなるでしょうか。

もちろん力の差があれば、できないこともあるでしょう。しかし、圧倒的な能力・技術の差がある中でも、自分ができる「最大限のプレー」をすることができれば、負けた試合でも子供達を大きな成長へとつなげてくれます。

やる気のサポートするメンタルトレーニング

人が最もやる気を出したり、最も集中力を発揮する瞬間は「手に入れたかったものが手に入るかもしれないと実感できた時」「目標が達成できるかもしれないと確信した時」です。

逆にどうしてもやる気が起きないという時期もあるかと思います。

「やらなきゃいけないことは分かっているけれど、そうしてもやる気が起きないし、集中力が続かない」

このような時は「やらなきゃどうなるか」より「やったらどうなるか」を考えさせることが大切です。

人は脳内でドーパミン(快楽ホルモン)が分泌されることで、やる気が高まるようになっています。そしてこのドーパミンは「やらなければいけない」ことしている時よりも「やりたいこと」をしている時に分泌されます。

そのため、「やらなければ最悪な状態になる」と選手を脅すよりも、「やれば必ず結果はついてくる」とワクワクするようなイメージができるようにサポートすることが大切です。




プレッシャーに押しつぶされる子供達

子供達は「自分の出しだ結果が周りから認められた!」と感じることでも達成感を得ることができます。

しかしそれと同時に、親やコーチから過剰な期待を感じてしまった場合は「次もこの期待に応えられるか」「お母さんやお父さんをがっかりさせないプレーができるだろうか」「次にこれ以上の結果が出せなかったらお父さんやお母さんはどう思うだろうか」と次のステップへのプレッシャーや不安を感じさせてしまうことがあります。

選手がプレッシャーを感じると「不安」「心配」「焦り」などのネガティブな思考が働き、呼吸が乱れ筋肉の働きに微妙な変化が生まれます。

そうなると筋肉はうまく稼働しなくなり、普段ではあり得ないようなミスをしてしまうことがあります。

ここで大切なことは、大人達が 「結果よりもプロセス」に目を向けた言葉かけをしてあげるということです。

勝敗ばかりに目を向けず「辛い練習も乗り越え努力を続けてきたから今の自分がある」ということを再認識させてあげることで、子供達は達成感を得て、更なる挑戦や努力をしていくことができるのです。

最後に

今回は「スポーツ指導でメンタルトレーニングが必要な理由|コーチングの理念」をお伝えしましたがいかがでしたでしょうか。

オリンピックでメダルを獲得する選手は、本番で結果を出すためにパターンを自分で見つけ、質の高いトレーニングを行なっています。

しかし、これは選手一人で築けるものではありません。

メンタルトレーニングの基本を指導者がしっかり理解したうえで、技術指導と併せてサポートすることで築き上げることができるのです。

2015年12月8日コーチング

Posted by kids-athlete