少年野球での監督暴力事件|子供がなぜチームを辞めなければならなかったのか

2015年10月4日ペアレーチング

コーチから指導を受ける野球少年

こんにちは、メンタルトレーナーの葉月(@w_haduki)です。

今回のテーマは 「スポーツ指導で暴言・暴力がなくならない原因と親の関わり方」についてです。

スポーツ少年団やクラブチーム、学校の部活動など、子供達がスポーツを学べる場所は色々あります。

その中で「指導者の暴力問題」は時代の流れと共に少しずつ変化しているものの、やはり根絶まで至るには、まだまだ解決していくべき問題が山積みです。

そこで今回ご紹介したいのは「少年野球で起きた監督による暴力問題」です。

今回の出来事を聞いた時、子供の夢や未来を守るためには、指導者が変わろうとするだけでは不十分で、そこに関わる全ての大人が「スポーツをする意義」や「暴言・暴力が子供にどのような影響を与えるか」をしっかり理解しなければ、子供達の夢や未来を守ることは難しいのではないかと深く考えさせられました。

今回は、スポーツ指導で起きる暴力問題とその周りにいる大人達の振る舞いについて考えていきたいと思いますので、最後までお付き合いいただければと思います。

少年野球で起きた暴力事件

少年野球

小学校入学と同時に少年野球に入部した聡くん。実は6年近くしてきた野球を辞めてしまいました。

聡くんが大好きだった野球を辞めた理由は「監督の暴言・暴力」でした。

監督は聡くんに「お邪魔虫」というあだ名をつけ、彼がミスをすれば「お邪魔虫君はお帰りなさ〜い!誰かママにお迎えの連絡を入れてあげてくださ〜い!」とあざ笑うかのような態度をとったり、選手達へ「お邪魔虫君にチームへ残って欲しい人〜?」と多数決をとったり、それは暴言というより「イジメ」でした。

そして時には野球ボールを投げつけられたり、バッドで聡くんが使用してくるグローブを傷めつけたりしたそうです。

そしてある日の練習では、ダッシュのタイムが一番遅かった聡くんに対し「またお前がビリか!?」と胸ぐらを掴み、そのままグランドに押し投げて「お前みたいな弱い選手は必要ない!」と叫んだそうです。

そして聡くんはそのまま帰宅し、お母さんに「もう無理」「チームを辞めたい」と泣きながら訴えたそうです。

私はその現場にいた関係者の方から状況を詳しく聞かせていただいたのですが、このチームの問題は指導者だけではないことが分かりました。

監督が「お邪魔虫君はおかえりなさ〜い!誰かママにお迎えの連絡を入れてあげてくださ〜い!」と保護者の方へ呼びかけると、その場にいた親達は笑っていたそうです。

聡くんを心配する親や監督の振る舞いに疑問を持つ親は誰1人としておらず「また言われてる〜」「誰か電話してあげたら〜?」「中々成長しないね…」と監督の振る舞いに同調するかのよう態度だったといいます。

そしてその場にいたコーチも監督の振る舞いに対して何も言わず、そして泣きながら帰っていく聡くんを無言で見送ったそうです。

指導者による暴言・暴力を根絶できない原因

グランド

今回の出来事から分かることは、暴言や暴力がなくならない原因が「当事者である指導者の問題だけでは終わらせられない」ということです。

もちろん、指導するコーチに一番の問題や原因があることは間違えありません。しかし、それを黙認する大人達がいて、そんな環境を良しとする大人達がいることも事実です。

私はスポーツ少年団や中学部活動でバスケットボールを頑張る子供に対してメンタルトレーニングを行っていますが、ヘッドコーチの暴言や暴力を良くないと感じていながら何も言えないアシスタントコーチや、暴言や暴力を振るわれているのが自分の子供じゃない場合は「見て見ぬ振り」をする親、もしくは指導者の振る舞いに同調する親もいます。

そのよう状況は指導者をさらに勘違いさせますし、そのような状況では暴言や暴力を根絶することをさらに難しくさせてしまいます。

指導者のこのような振る舞いをなくすためには、その周りにいる大人達全ての意識を変えていく必要があるのではないかと感じました。

暴言・暴力について親達はどう考えるべきなのか

野球の試合

指導者による暴言・暴力問題は、「加害者が指導者」で「選手が被害者」というケースが圧倒的に多いですが、そうなってしまうには、本当に指導者だけの問題にしていいのかは疑問ですし、私達はもっと視野を広く持って、様々な問題を解決する必要があると思います。

保護者の方にも「暴力肯定派」がいて、「コーチ!うちの子はメンタルが弱くって困っています。殴るなり蹴るなり好きにしてかまわないのできっちり鍛えてやってください!」ときつい指導をお願いする親の姿を見かけることがあります。

どんな事情があれ、保護者が指導者へ暴力を使った指導を促すことはあってはなりませんし、そのような行為で子供達のメンタルは強くなりませんし、それどころが心に深い傷をつくってしまうことだって、夢を閉ざしてしまうことだってあるのです。

もしも暴力で強くなっていると感じるのであれば、それは子供が暴力に慣れてそれが当たり前だと感じるようなってしまったのかもしれませんし、ただただひたすら我慢することを覚えてしまったのかもしれません。

そしてその逆に、暴言や暴力に対して拒否反応を示す選手は「メンタルが弱い」と言われる。

大人の都合でメンタルの強い・弱いが判断され、それは決して正しい答えではありません。

親は子供を守る人でなければなりませんし、指導者は子供達への競技指導と同時にスポーツをする楽しさや意義を教える人でなければなりません。

果たして現在の大人達は「自分の欲や願望よりも子供の夢や未来を考えている」と胸を張って言える人はどのくらいいるのでしょうか…。

周りも行動しなければチーム内の暴力はなくならない

今はどの競技でも、暴言・暴力に対して「当たり前の行為ではない」「指導の一環だとは認められない」という考え方になっており、暴力根絶に向けた取り組みが多くの競技で見られるようになりました。

それでも今回の少年野球のような出来事は今だに起こっていますし、やはり監督やコーチが「指導の一環とし愛情を持ってしていること」だと言っているチームも存在します。

つまり、これだけ暴言や暴力が子供達にとって悪影響だと呼びかけられているにも関わらず、聞こうとしない、学ぼうとしない指導者は、誠に残念ではありますが、この先もよほどのことがない限り自分の考え方を変えることはないのかもしれません。

そしていくら周りが呼びかけても、指導者本人が自発的に変わろうとしなければ意味がありません。

そのためにまずできることは、周りが変わることなのかもしれません。

遠回りのように感じるし、合理的でないと感じるかもしれませんが、実はそれが一番の近道で合理的な方法かもしれません。

ただ人は、何かを変えようとすることに消極的な傾向にあり、「不安」や「恐怖」があるためその邪魔をしてしまいます。

しかし、大切な子供を守るためにするべきことは、指導者の暴言や暴力に同調することでもなければ、見て見ぬふりをすることでもありません。

暴言や暴力問題を指導者だけに原因を追求するのではなく、それぞれにできること、してはいけないことをしっかり考えて子供達の未来を守っていけたらスポーツ少年団や学校の部活動で行うスポーツをもっと価値のあるものにできるのではないでしょうか。

暴力で強くなったと勘違いする選手達

実際に暴力を受けてきた選手の中には「暴力肯定派」がいて、様々なところで暴力根絶に向けた取り組みが発信されている中、「それでは選手の能力が引き出されない」「それではスポーツ指導が成り立たない」「日本からオリンピックに出場できる選手が減る」という反論意見が多いのも事実で、そのことも「暴言」「暴力」が根絶できない原因の一つではないかと思います。

選手の中には、指導者から暴力を振るわれても、それがスポーツを辞める理由にはならないという選手もいますが、スポーツをする全ての子供達がそうだというわけではありませんし、「暴言」「暴力」よって、夢や目標を閉ざされてしまう子供達がいることも忘れてはなりません。

暴力に耐えることが能力の一部であれは、私はスポーツに魅力を一切感じませんし、そもそもそれがスポーツだと言えるのでしょうか。

特に小学生で行われるスポーツは、競技そのものに対する技術習得よりも、「楽しんでしている」「好きだからしている」という内発的動機づけが必要だと感じますし、その内発的なモチベーションが子供達を強くしてくれるのではないでしょうか。

桑田真澄さんが語る指導理論

 野球で成功した人は、「体罰を受けたからこそ、成長できて、今の自分がある」と思う傾向が強い。体罰批判は、自分の野球人生を否定することになるからだ。「嫌だった」と言いながらも「必要だった」と答える人が多い。だが、僕の経験上、体罰は技術の向上に結びつかない。失敗を恐れ、選手の主体性を奪うだけだ。

 指示され、怒鳴られ、殴られた高校球児が将来、どんな人生を送るか。自主的に考え、行動する習慣を身につけるのは難しいだろう。それは野球人のセカンドキャリアの難しさにもつながっている。指導者の皆さんには、グラウンドの外でも自分で考え、行動できる選手を育ててほしい。そのためにも、言葉で伝える、真の指導力をつけてほしいと願う。

参照元:桑田真澄氏、高校野球の体罰問題に提言「昔は『愛のムチ』、現在は『犯罪』」http://www.hochi.co.jp/baseball/hs/20170205-OHT1T50301.html

まとめ

今回は「少年野球での監督暴力事件|子供がなぜチームを辞めなければならなかったのか」についてお伝えしましたがいかがでしたでしょうか。

現在指導者による暴言・暴力問題が指摘されていますが、明らかに目に見えるものだけに原因を追求していては、このような「根が深い問題」は中々解決しないなと感じるようになりました。

スポーツに関わる全ての人が、同じ認識、同じ考え方で進むことは無理かもしれませんが、その中で本当に大切なことを一致させることは、子供達の夢や将来を守るためには大切なのではないでしょうか。

2015年10月4日ペアレーチング

Posted by 葉月 愛